なるほどヒトが動物を使って食べ物を集める例は他にもある。犬を使ったイノシシ狩りや、紐で繋いだ鵜に魚を捕らせる鵜飼いなどだ。だが訓練を施した動物を利用するそれらの例と異なり、ヤオ族は野生の小鳥と協力関係を結ぶ。その日にたまたま出会った小鳥と交信し、蜂蜜というごちそうにありつく。世界広しといえど、こうした例は他にない。
では最後の疑問。ノドグロミツオシエとヤオ族の関係は、アブラムシとアリのような、生物進化の生み出した共生関係(互いに依存し合う「相利共生」)と言えるのか。
世代を超えて受け継がれる、小鳥とヒトの共生関係
答えはイエスである。ヤオ族の「バララララ……フン!」とそれに続く蜂蜜探しは、遺伝的にプログラムされた行動ではないが、父親からの学習という形で次の世代へと継承されている。
一方のノドグロミツオシエは、実はカッコウのように他の鳥の巣にこっそり産卵し、仮親に雛を育てさせる「托卵」の習性を持つ。実の親子が終生顔を合わせないので、生活の術を伝授しようがない。だからこの鳥はおそらく、ヒトを利用して蜜蝋にありつくよう遺伝的にプログラムされている。最初は失敗するかもしれないが、経験を重ねてヒトをうまく操る呼吸を学んでいく。
以上のように、この小鳥とヒトの依存関係は長い時間をかけて築かれたもので、世代を超えて受け継がれている。その背後には、学習の効果と遺伝的基盤の両方が絡み合っており、生物進化の生み出した2種の共生関係と言える。
ヒトと共生関係を結ぶ鳥がいる――ほとんど嘘のように聞こえる科学的真実である。


