東洋経済オンラインとは
ライフ

日本とアメリカで別進行する「ゴジラワールド」、東宝を象徴する怪獣は再び原点から離れてしまうのか

6分で読める
(写真:ブルームバーグ)
2/2 PAGES

しかし最近は公開時期が重なり始めている。同時にレジェンダリーは「Apple TV」でゴジラとコングを登場させたシリーズ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」を展開しており、現在はシーズン2に入っている。さらに東宝は幾つかのアニメシリーズや短編作品にもゴジラを登場させている。

こうした中で東宝は、これら全てのバリエーションが「ゴジラワールド」として共存可能だと宣言した。この取り組みを率いるのは大田圭二氏で、NewsPicksとの最近のインタビューでこの構想について語った。

映画やコミックに加え、フィギュアからTシャツ、マグカップに至るさまざまな商品を展開する米ウォルト・ディズニーの「マーベル・ユニバース」に近い考え方だ。ディズニーは著作権保護に積極的で、最近では無断でマーベルキャラクターを生成した人工知能(AI)企業にも対抗措置を講じている。

東宝が示しているのは、多くのゴジラが存在し得ても、その全てを統括するのは自分たちであり、必要とあれば知的財産権を行使するという姿勢だ。

「チーフ・ゴジラ・オフィサー」という肩書を持つ大田氏は、東宝のアニメ事業、商品・ライセンス、デジタルコンテンツ販売、さらには知財管理と戦略を担う。

新作映画や新しい怪獣、新規観客層、あらゆる世代に向けたゴジラの広がりを見据えている。同時にブランド展開も加速しており、すでにフォーミュラ1(F1)マシンやラコステのTシャツにも登場している。

私はゴジラ作品が増えること自体には賛成だ。ゴジラは主役としてジェームズ・ボンドを上回る数の作品に登場している。

しかし同時に、この怪獣の意味が希薄化することも懸念している。大田氏は東宝で約40年にわたり主にアニメ分野に携わってきた。レジェンダリーとのライセンス契約などには積極的だが、高く評価されたシン・ゴジラとゴジラ-1.0への関与は比較的少ない。

極めてヒューマンな存在

東宝を象徴する怪獣は再び原点から離れてしまうのか。レジェンダリー作品の怪獣がますます漫画的になりつつある中で、その兆しは見え始めている。

激動の時代に都市を破壊する怪獣について語ることを不謹慎と感じるファンでない人々に対し、ゴジラを正当化する議論はいくらでも可能だ。この怪獣は極めてヒューマンな存在でもある。

初代ゴジラは1954年3月、ビキニ環礁で行われた米国の水爆実験に強く触発された。この実験では約80マイル(約129キロメートル)離れた場所に停泊していた日本漁船の乗組員23人に放射性物質が降り注ぎ、多くががんを発症、あるいは死亡した。船の名は「第五福竜丸」だった。

核と竜という現実の組み合わせにより、ゴジラ第1作の本多猪四郎監督は放射能を帯びた怪獣が東京を破壊する姿を通じて、広島と長崎を巡る日本の感情を投影した。ゴジラは悲劇を体現し、それを乗り越える手段でもあった。

今日のファンも怪獣同士の戦いに熱狂している。私の中の6歳の子どもも同じだ。しかし同時に、この怪獣が持つ深いレガシーも尊重している。

ゴジラ-0.0の映像に、1945年の原爆で骨組みだけが残った広島の原爆ドームを想起させる描写があると指摘する声も多い。ゴジラとその同類は獣のような原始的な振る舞いを見せるが、リルケが述べた通り「全ての天使は恐ろしい」。だとすれば、怪獣の側に立つのも悪くない。

(ハワード・チュアイオン氏は、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、文化とビジネスを担当しています。以前はブルームバーグ・オピニオンの国際エディターで、米誌タイムではニュースディレクターを務めていました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)

著者:Howard Chua-Eoan

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象