実際、ノビシロハウスに問い合わせてくるのは、それぞれの事情で自分の親を施設に送り出した経験のある60代や70代が多い。その声には「もっと自由に暮らしたい」「人との関わりのなかで年を重ねたい」という思いが共通している。
70代で入居したある女性からは「隣人とも心地よい距離感で、ひとり暮らしを満喫しています」という声、お茶会を見学した40代の女性からは「ゆるくつながり見守り合える暮らしに魅力を感じています。数年後の自分の選択肢にしておきたいです」という声も届く。※「ノビシロハウス公式サイトより引用」
60代、70代だけでなく40代からも関心が寄せられていることは、ノビシロハウスが投げかけるテーマが「高齢者の問題」にとどまらないことを示している。
「周りに顔を見て話せる人がいるか、楽しみごとが月に何回かあるか。それが人間の幸福度に関わると思うんです。施設か、ひとり暮らしか。その二択が多くを占める現状に、もうひとつの選択肢を加えたい。家族が『ねえ、あっちに行ったほうが楽しそうじゃん』と気軽に提案できる暮らしが、普通にある世のなかにしたいんです」
「年を重ねたとき、どこで、誰と、どう暮らすか」
最後に、「ノビシロハウスで実現したい暮らしとはなんですか」と聞くと、鮎川さんはこう答えた。
「人は社会や地域と関わり合いながら生きていきたい生き物だと思います。孤独がいちばん心身をむしばむ。ノビシロハウスのような仕組みがあれば、孤独死のリスクも減り、オーナーさんの不安も減る。その価値観をもつ多世代の人たちがともに住めばいい。それだけのことなんです」
神奈川県藤沢市の閑静な住宅街からはじまった構想は、確実に広がろうとしている。それは「年を重ねたとき、どこで、誰と、どう暮らすか」という、いずれ誰もが直面する問いへの、ひとつの答えだ。
