ただし鮎川さんが目指したのは、稼いだお金で寄付をするような形ではなかった。
「資本主義の社会では、人を助けるにもお金と時間が必要です。せっかくなら、その仕組みを使って事業として成り立つ形で人の助けになりたいなと。稼いだお金をなにに使うかは自由だという人もいますが、私は事業そのもので人の役に立ちたいと思ったんです」
2011年6月、内側から湧き上がる思いに突き動かされるように、鮎川さんはスーツケースひとつで九州を出た。
初めての部屋探しで体験した不誠実な対応
上京した翌日に、部屋探しをスタート。初めてのひとり暮らしだったこともあり「部屋はすぐに決まるだろう」と楽観的に考えていた。しかし28歳の鮎川さんは仕事もなく、東京に足がかりがない状態。不動産会社をめぐったものの門前払いをされ、すぐに部屋を借りることはできなかった。
ひとまず働かなければとアルバイトをはじめ、ネットカフェで寝泊まりする日々。2カ月ほどでようやく電話営業の仕事に就き、部屋探しのために再び不動産会社へ向かった。しかしそこで受けたのは、あまりにも不誠実な対応だったという。
「『新宿まで1本で行ける場所で、家賃8万円の1K』と希望条件を伝えました。担当者から提示されたのは3つの物件資料。老朽化が進んでボロボロの2軒とそれよりはマシな1軒で、実質的な選択肢はひとつしかありませんでした」
「駅から徒歩10分以内」と希望を伝えていたにもかかわらず、実際に物件まで歩いてみると20分はかかる。「遠いですね」と鮎川さんが言うと、「すいません。道に迷っただけです」と担当者は言い張った。土地勘のない鮎川さんは「フリーレント1カ月分がついた特別なパック料金なので10万円で入れる」と言われ、すすめられるまま契約に気持ちが傾いていく。
ところが契約の前日、担当者から不可解な電話がかかってきた。
「『フリーレント1カ月と言いましたが、1日分だけでした。差額の賃料8万円を現金でもってきてください』と言われたんです。そんなことがあるのかとビックリしましたよ。でも、ずっとネットカフェ暮らしでこれ以上長引かせたくなくて、しぶしぶお金を払いました」
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【なぜこんな営業がまかり通るのか】
