ここからは実例を見ながら分析してみましょう。
実例:マツダ(7261)のケース
自動車会社の中でもネットキャッシュが豊富なのがマツダです。2026年3月期第2四半期時点で、現預金1兆533億円に対し、有利子負債は8021億円。ネットキャッシュは2512億円でした。時価総額(約7496億円)に対し、ネットキャッシュが約3分の1を占めており、製造業ではかなりキャッシュリッチといえます。PBRが0.43倍で割安なのも頷けるでしょう。
また、トランプ関税で株価が723円の安値まで下がったときに公開されていた最新の決算説明会の資料(2025年3月期第3四半期のもの)に記載されていたネットキャッシュは3855億円もありました。株価723円だと当時の時価総額は4568億円ですので、時価総額の84%がネットキャッシュという驚くべき状況でした。
実例:ガンホー(3765)のケース
スマホゲーム「パズドラ」で知られるガンホーは、現預金1301.9億円に対して有利子負債はゼロですが、ここで重要なのが自己株式の扱いです。多くの株式情報サイトでは「自己株式も含めた発行済株式数×株価」で時価総額を算出していますが、自己株式の分は差し引いて計算しないと割安度を見誤る可能性があります。同社は自己株式を21.4%も保有しており、これを除いて時価総額を計算すると、時価総額の90%以上にのぼる現預金を抱えていることになります。
また、時価総額の90%以上に達する現預金を保有しているわけですから、逆に言うとゲーム事業自体に対する投資家の評価が非常に低いこともわかります。
実際、同社の売上高は横ばいですが、営業利益など利益面ではここ数年、大きな減益が続いています。
② 有価証券・投資有価証券の正体
上場企業が保有する有価証券は、主に2つの欄に記載されています。
1. 流動資産の「有価証券」: 売買目的や1年以内に満期が来るもの
2. 固定資産の「投資有価証券」: 子会社株式や持ち合い株、1年超の長期債券
企業がどのくらい有価証券を保有しているのかを簡易的に知りたい場合は、2つの項目の数値を足した総額を見るだけでかまいませんが、より重要なのは後者の「投資有価証券」で、金額もこちらの方がはるかに大きくなります。
固定資産に分類されている「投資有価証券」は主に
・満期保有目的債券(1年超)
・子会社・関連会社株式
・その他有価証券(政策保有株式など)
の3つがあります。
2026年、キャッシュリッチ企業に火がつく理由
「現預金-有利子負債」が時価総額に迫るような企業は、東証のPBR1倍割れ解消に向けた要請や日経平均の株高により少なくなりました。しかし、それでも時価総額に匹敵する現金を抱えた企業はいまだにたくさんあります。
