大病を経験したことで、金田さんの価値観も大きく変化した。以前以上に、生産者への敬意を強く持つようになったという。食材を作る人の顔が浮かぶ。だからこそ、雑には扱えない。
「全部、感謝なんですよね」
食材。お客。仲間。そして、自分を待ってくれていた人たち。
「俺が頑張ってるっていうより、生かされてる感じなんです」
だからこそ今は、「ちゃんと作る」ことにより一層向き合っている。AIや効率化が進む時代の中でも、最後に残るのは「何を作りたいか」を持った人間だと金田さんは語る。
レシピや原価計算はAIでもできる。だが、「なぜこの麺なのか」「なぜこのスープなのか」という意思は、作り手にしか宿らない。その哲学は、病気によってすべてを失いかけたからこそたどり着いたものなのかもしれない。
それでも原点は変わらない。厨房に立ち、仕込みをし、お客の「美味しい」を聞くこと。
「店で肉切ってるだけでも楽しいんですよ」
その言葉に、すべてが詰まっている。
「食べてもらえて感謝。作れて感謝」
一時は「良くて車椅子」と言われた男が、再び寸胴の前に立っている。それは奇跡なのかもしれない。だが、その奇跡を起こしたのは、ラーメンへの執念と、人とのつながり、そして「もう一度作りたい」という純粋な思いだった。
金田さんは最後に、静かにこう語った。
「食べてもらえて感謝。作れて感謝。本当に、それだけなんですよ」

