3時間×7000円=2万1000円が、彼が請求できた仕事の総額です。残りの5時間・3万5000円分は、誰の請求書にも載らない「属人化の維持コスト」として消えていきます。これがエース級全員で同時に起きているのが、中小企業の生産性問題の正体です。
受注を増やすほど、エースの穴埋め時間が増え、単価の高い設計時間が削られていく。「忙しいのに儲からない」の正体は、ここにあります。
欠陥を埋める「4つの視点転換」
では、この2つの欠陥をどう埋めるか。鍵になるのは、多くの経営者が無意識に持っている「思い込み」を反転させることです。価格の側で2つ、時間の側で2つ、合計4つの視点転換を紹介します。
【視点①】強みは、自分で答えてはいけない
多くの経営者は、自社の強みを問われると「品質」「誠実さ」「対応力」と即答します。しかし、これでは値上げの根拠になりません。同業他社も全員、同じ言葉を使うからです。
有効なのは、自分で答えるのをやめて、顧客の言葉で集めることです。直近で契約してくれた5社に「なぜ他社ではなく当社を選んだのですか」と率直に聞き、答えを10個書き出します。出てくるのは「対応が速い」ではなく「深夜のトラブルでも折り返しが30分以内」、「品質が高い」ではなく「不具合の再発が他社と比べて圧倒的に少ない」――具体的で、数字に近い強みです。これが値上げの根拠であり、営業資料に書くべき独自性になります。
【視点②】値上げは、交渉ではなく契約で済ませる
中小企業の多くは、値上げのたびに「お願いする側」として頭を下げ、失注リスクを背負ってきました。ところが、契約書に「原材料費や人件費が一定割合を超えて変動した場合、協議の上で改定する」の一文があるだけで、立場は一変します。
値上げは「契約に則った協議」となり、「お願いごと」から「事務手続き」へと格下げされる。新規契約は今日から、既存契約は更新タイミングで差し替える。一文の有無で、数年後の利益率は大きく変わります。
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【「努力が報われる構造」をつくる】
