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社長「利益が出たタイミングで給料上げる」エース社員が"創業以来の最高益"の翌月、退職届を出した必然の理由

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社長は本心で「利益が出たら還元する」と言っていました(写真:life-shooting / PIXTA)
  • 安東 邦彦 ブレインマークス代表取締役
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【視点③】属人化の犯人は、エース本人の善意である

Bさんのような中核社員を1人選び、1週間、15分単位で時間を記録してもらってください。多くの経営者は、その結果に驚きます。「他の社員からの質問対応」「過去案件の履歴探し」「顧客からの『前回どうでしたっけ』への返答」――この3つが、想定の何倍もの時間を食っているからです。

共通するのは、エース本人が「自分が答えたほうが早い」と思って引き受けていること。属人化はサボりではなく、最も真面目な人の善意でできあがります。だからこそ、本人の意志では解けません。属人化を解くのは、エース本人ではなく、経営者の仕事です。

【視点④】文書化すべきは「手順」ではなく「判断の背景」

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多くの会社は手順書をつくって満足します。しかし手順書は、模倣はできても応用は効きません。Bさんのような社員が抜けた瞬間に現場が止まるのは、「手順」ではなく「なぜそうするのか」が、彼の頭の中にしかないからです。

たとえば「この部品は調達に3週間かかるため、残量2割で発注する」。手順ではなく、その判断に至る前提まで書き残す。これが組織の知的資産として積み上がっていきます。あわせて、一次問い合わせ、議事録、定型レポートは、外注やツール、分業で手放す。「できる人がやったほうが早い」という判断こそが、エースの時間を静かに奪い続ける、最も見えにくい搾取です。

この4つの視点は、どれか一つを単発で取り入れても効きません。視点①②で価格を上げ、視点③④で時間を空ける――この両輪が揃って初めて、賃上げ原資は構造的に生まれ始めます。

経営者の仕事は頑張らせることではない

賃上げ圧力と人手不足が同時に押し寄せるこの時代に、社員へ「もっと頑張れ」と求める経営は、すでに限界を超えています。経営者の役割は、現場の努力に依存することではありません。価格と仕組みを整え、「努力が報われる構造」をつくることです。

社員の献身に甘えて後払いでしのぐ会社は、いずれBさんのような人から去っていきます。不満を一番口にしなかった、最も会社を信じていた人間から先に。

賃上げするも地獄、しないも地獄――そう語られる時代です。しかし本当の地獄は、旧来の「後払い経営」のまま、この時代を乗り切れると信じ続けることのほうです。

いま経営者に求められているのは、賃上げを決断する勇気以上に、賃上げし続けられる経営構造へと自社を作り変える決断です。

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