7年目の春、会社の売上は創業以来の最高額を記録します。全社朝礼で誇らしげに数字が共有された日、Bさんは「今年こそ」と思っていました。
しかし、その年の面談でも、C社長の口から出た言葉は「もう少し待ってくれ」でした。
面談後、Bさんはトイレに入り、しばらく出てきませんでした。怒っていたわけではありません。ただ、何かが静かに折れた音がしたのです。
退職届を出したのは、その翌月のことでした。C社長は、目に見えて動揺します。
「なんで今なんだ。やっと利益が出てきたのに」
Bさんは、静かに答えました。「社長が嘘をついていたとは思っていません。ただ、7年待ちました。その間に物価は上がって、家族の生活は少しずつ苦しくなり、市場の相場とも差が開き続けました。もう少し待てば変わるかもしれない、とずっと思ってきました。でも、信じることに疲れました」
C社長は、何も言えませんでした。
「利益が出たら還元する」は美徳ではない
C社長は、本心で「利益が出たら還元する」と言っていました。問題はその言葉ではなく、言葉の順序にあります。
「業績が良ければ還元する」という順序は、長らく日本の中小企業では一種の美徳とされてきました。利益が確定してから動くほうが堅実で、身の丈に合っている――そう信じられてきたのです。
しかし、この順序はもはや機能しません。理由は3つあります。
第一に、物価上昇のスピードが、賃金据え置きに追いつけないほど速くなったこと。5年間給与が変わらないということは、社員にとっては実質的な減給を5年間受け続けたのと同じ意味になります。
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【「後払い」は危険な経営スタイル】
