2016年、一人の大物アーティストがユニバーサルミュージックからソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)傘下のソニー・ミュージックレーベルズに移籍した。
米津玄師。
徳島県で過ごした高校時代、ボーカロイド(パソコンで歌声を合成できるソフト)の曲を「ハチ」の名義でネットに上げていた少年は、13年にユニバーサルからメジャーデビュー。15年に3枚目のアルバム『Bremen』が日本レコード大賞の「優秀アルバム賞」に選ばれるなど順調にキャリアを重ねた。
そんな米津にSMEは、ソニーグループが持つあらゆる機能を使って「作品に社会的な広がりを持たせる」ことを提案した。提案に魅力を感じた米津は移籍を決意。米津のための専門チームをつくったSMEが展開したのは大胆なタイアップ戦略だった。
石原さとみ主演のテレビドラマ『アンナチュラル』の主題歌『Lemon』は、Billboard JAPAN「Hot 100」で18年、19年と2年連続の年間1位に輝いた。NHKの「2020年応援ソング」プロジェクトに採用された小中学生5人のユニット「Foorin(フーリン)」の『パプリカ』も米津がプロデュースし、そのダンスは社会現象を巻き起こした。
その後も、米津はアニメや映画の主題歌を次々と生み出す。23年には人気ゲーム『ファイナルファンタジー16』のテーマソングを手がけ、24年にはNHK連続テレビ小説『虎に翼』の主題歌『さよーならまたいつか!』で世代を超える人気と知名度を獲得した。
ドラマ、アニメ、映画、ゲーム。SMEの米津専属チームはグループのあらゆるプラットフォームを使って「米津」という才能を社会に浸透させていった。YOASOBI、Creepy Nutsも同じ方程式で世界に影響力を広げている。音楽業界で独り勝ちを続けるソニーの底力の一端がここにある。
いわば「タレントと時代のシンクロナイズ(同調)」。それをソニーで最初にやったのがCBS・ソニーレコード社長時代の大賀典雄(後のソニー社長)である。
後発のソニーが考え出した「アイドル路線」
この記事は有料会員限定です
残り 5040文字
