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非イケメン界隈の希望の星~明治一オモロイ経営者・朝吹英二①『明治実業家の知識・見識・胆識』特別編

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日本橋にある三井のビル群(撮影:今井康一)
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まず、彼の容姿については、さまざまなエピソードがある。

ある家を訪れたとき、出てきた女中さんが、彼の容貌から判断して、目の前の当人が実業界の大物である朝吹英二本人であるとは思わず、

「朝吹さんのお使いですか?」

と繰り返し聞くので、彼は、

「こんな顔でも私が本人の朝吹です」

と答えている。

また、彼は結婚式や見合いがあると、引っ張りだこだった。

なぜなら彼が出席すると、お婿さんやお見合いの男性が、引き立つから。彼も、それを承知で喜んで出席していた。

知謀とうっかりが同居する怪物の魅力

では、なぜイケメンとは言えない彼がもてたのか。

それは彼の、人を包み込むような度量の大きさと、底知れぬやさしさにあった。

たとえば、人力車で料理屋に行って、車夫の方が腹が減ってると見れば、「まず車夫にご馳走をしてくれ」と言ったり、「自分は別のがいい」といって出てきた料理を車夫に回してしまうような、そんなタイプ。

このため、おカネがなくなっても縁の切れ目とはならず、彼が巨額の借金を背負ったさい、

「朝吹さんの落ち目を見捨てたんじゃ、吉原芸者の意地が立たない」

と、ひいきにしていた芸者たちが、逆に彼に貢いで、不遇の期間を支えたりしている。

この意味において、彼は非イケメン界隈の偉大なる希望の星でもあった。

さらに彼は、とんでもない、うっかり者でもあった。

会合などがあると、ある時期から、彼は他の全員が退席するまで、部屋から出してもらえなかった。

なぜなら、彼が先に部屋を出ると、ほぼ間違いなく他人の下駄を間違えて履いて帰ったり、帽子やコートを持っていてしまうからだ。

また、友人の家を訪問したとき、友人が不在で、居間で待たせてもらったのだが、夏場で暑いし、どうせ気の置けない仲だからと、彼は裸になって居間で横になっていた。

しばらくして家の主人が帰ってくると、全然知らない顔。家を間違えていたのだ。彼は慌てて服を着て逃げ帰ったという。

これはこれで、うっかり界隈の帝王といった趣だが、ところがそんな彼にして、頭は抜群に切れ、

「知謀湧くがごとし」

と称えられている。

どうも彼は頭の回転が速すぎたらしい。頭だけが先に行ってしまうので、行動がチグハグになってしまうのだ。しかしそれが、彼のたまらぬ愛敬の源泉ともなっていた。

ちなみに、朝吹英二の弟の家系からは、ノーベル賞をとった野依良治氏が出ている。

(続)

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