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ベッセント米財務長官は、スイス・ダボスを訪問した1月、日本国債の急落が米国債市場に波及する局面で片山さつき財務相に厳しい言葉を浴びせた。
世界経済フォーラム年次総会に合わせて行われた日米財務相会談で、ベッセント氏の語り口は、日本の当局者から見ると、通常の意見交換というよりも叱責(しっせき)に近いものだった。事情に詳しい複数の関係者が非公開情報だとして匿名を条件に語った。関係者の1人によれば、ベッセント氏は矢継ぎ早に論点を提示し、同席した日本側の事務方が内容を書きとめるのもままならないほどだったという。同関係者らは、ベッセント氏が具体的に何を求めたかについては明らかにしなかった。
ベッセント氏は公の場でも片山氏に圧力をかけた。米FOXビジネスとのインタビューでは、日本側と協議したことを明らかにした上で、市場を落ち着かせるために発信すると「確信」していると述べた。その後間もなく片山氏は市場に冷静な対応を促し、「責任のある、持続可能な」財政政策を推進していることを強調した。このメッセージは、日本の財政支出計画を巡る投資家の不安をある程度和らげたようだ。
財務長官就任から1年余りで3度目の訪日
このエピソードは、かつてヘッジファンドマネジャーとして対日投資で成果を上げたベッセント氏が、米国にとって最重要なアジア同盟国である日本の経済の進路形成に、異例とも言えるほど積極的な姿勢で臨んでいることを物語っている。米国が借り入れを増やし続ける中、すでに高水準にある米国債利回りを間接的に押し上げかねない日本の動きは、トランプ政権にとって歓迎しがたいものとなる可能性が高い。
ベッセント氏は、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談が行われる中国へ向かう途中、日本に立ち寄る。これは、日中間の緊張が続く中で、米国が対中関係のみに注力しているわけではないという安心感を日本側に与える側面もある。もっとも、高市早苗首相にとっては、国内政策の主導権を維持しつつ米国からの支持を取り付ける必要があるという点で、ベッセント氏の日本に対する関心はもろ刃の剣だ。
ベッセント氏は11日から日本を訪問する予定で、財務長官就任から1年余りで3度目の訪日となる。今回は日本の通貨当局による大規模な円買い介入が複数日実施されたとみられる直後の訪日となり、投資家は何かしら緊張の兆候が表れるのかを注視している。同氏はかねてより為替介入に批判的で、利上げを支持している。
オールニッポン・アセットマネジメントの森田長太郎執行役員・チーフストラテジストは、ベッセント氏が「何か強く要求をしてきた場合、日本が押し返すのは難しいのではないか」と指摘。「ベッセント氏の日本に関する発言が非常に重要であることは間違いない」と述べた。
米財務省にベッセント氏の訪日に関してコメントを求めたが、返答はなかった。日本の財務省からもコメントは得られていない。
ベッセント氏の訪日は、日本の資金フローが米国市場に及ぼし得るリスクと、中国と対立する中で日本が米国にとって重要なパートナーであることの双方を浮き彫りにしている。同氏によると、1990年以降の訪日は今回で54回目で、これは長年にわたる日本への関心の深さを表すものだ。
ベッセント氏のX(旧ツイッター)への投稿によると、12日に高市氏と片山氏と会談した後、13日にソウルへ向かい、中国の何立峰副首相と会談を行う予定。中国商務省は、米中首脳会談に先立ちソウルで行われる協議では、貿易問題に焦点を当てることを確認した。
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【「前例がない」と指摘】
