今回、ネバダ大学の教授が、「不快さ」や「不便さ」が私たちの健康を向上させ、人生を豊かなものにすると説く『快適さの罠:私たちの祖先が経験した「不快さ」が人生を充実させる』より、一部抜粋・編集のうえ、お届けする。
変化したストレスの質
私たちの祖先はストレスにさらされていた。そして、ストレスの原因は無数にあった。食べ物が手に入らなければ死が待っていた。せっかく手に入れた食べ物をライオンに狙われたら、やはり命を落とす(逃げきれなければ大惨事は免れない)。
水場から遠く離れすぎてもいけない。ひどい悪天候に見舞われても、感染症にかかっても、つまずいて脚を骨折しても、待ち受けるのは死だった。命を失う危険はきりもなくあった。
もちろん、現代人にもストレスはある。アメリカ心理学会によれば、その深刻さはこれまでになく増している。
それでも私たちは、人類が何百万年ものあいだ耐え続けてきたような切迫したストレスにはほとんど直面していない。極度の飢えに襲われることも、食料を追って疲れ果てることも、重い荷物を運び続けることも、得体の知れない細菌や激しい気温差にさらされることもまずない。
また、次の食事をどう確保するか悩むことも、牙をむく捕食者に怯えることも、小さな傷が感染して数日で命を落とすのではないかと恐れることもほとんどない。


