ボイジャー1号は打ち上げ後、木星と土星に接近して観測を行い、その後は太陽系外の探査に向かった。ボイジャー2号は1号からやや遅れて木星から土星に到着して追加の観測を行った。さらに天王星と海王星にも接近観測を行ったのち、ボイジャー1号とは別の方向の太陽系外へと航行を続けている。
満身創痍の探査機
2026年4月17日、NASAのジェット推進研究所(JPL)はボイジャー1号に対し、搭載する観測装置のひとつである低エネルギー荷電粒子装置(LECP)の電源を切る命令を送信した。理由は、この探査機が搭載する、放射性同位体熱電気転換器(RTG)と呼ばれる原子力電池が発生する電力が低下してきているからだ。
RTGは放射性同位体であるプルトニウム238の崩壊熱を熱電対で電気に変換する。燃料電池や蓄電池では賄えないような長期間にわたる数百ワット程度の電力を必要とする無人ミッションに適しており、太陽電池で発電ができないほど遠い宇宙を航行するボイジャーの活動を支えてきた。しかし、当初は400ワットほどあったRTGの発電能力は、現在は年間約4ワットずつ低下している。
RTGの寿命を延ばすため、NASAはボイジャーに搭載する何種類もの観測機器の電源を、不要になったものから順に切ってきた。そして現在も稼働する主要な観測機器はLECPを含めて3つだけになっていた。
LECPは、ボイジャー1号の打ち上げ以来ずっと稼働し続けてきた観測装置だ。ボイジャー探査機はすでに、太陽から放出される太陽風の届く範囲である太陽圏を飛び出した先の、星間空間と呼ばれる場所に出ている。LECPはそんな宇宙の未知の空間で観測を続け、貴重なデータを地球に送り続けてきた。そのデータは、太陽系の境界や他の恒星系の間に存在するガス、塵、放射線からなる「星間物質」の構造を科学者がより深く理解するのに役立てられている。
しかし今年2月27日には、ボイジャー1号のRTGで予期せぬ電力レベルの低下が発生した。さらに電力の急減が起こると、同探査機はシステム全体を保護するために一部の機器をシャットダウンする、自動保護システムが作動しかねない状況となった。
ただ保護システムとはいえ、それが作動したときにすぐトラブルを解決して再起動できるのは、ボイジャーがまだ地球に近い場合の話だ。もしいま、ボイジャー1号の保護システムが作動してしまえば、NASAのエンジニアは、地球から250億km以上も離れ、通信が片道1日近くもかかる探査機に対し、長い時間をかけて高リスクな復旧作業を行わなければならなくなる。
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【現状では最善の選択肢】
