ただし、上階のほうが空いていることを考慮すれば、トータルで見ると快適度は増しているとも考えられる。また、旧型と新型のフードコートをどちらも用意しているという点で、新型しか選択肢のない商業施設と比較すれば、よっぽど開かれているとも言えるだろう。
サイゼリヤ撤退の背景にある収益構造と「居場所」の縮小
前述のガイドラインでは、すべての利用者に適合する設計を実現することは現実的に難しく、サービススタッフによる支援などの補完が重要だとも指摘されている。
こうした指摘を踏まえると、サイゼリヤの店舗運営は別の意味を持って見えてくる。サイゼリヤでは、店員が席まで案内し、料理を運んでくれる。おまけに椅子は高くないし、照明は明るく、メニューがしっかり見える。
当たり前のことのようだが、回転率を考慮すれば椅子は自然と高くなっていくし、収益性を考えると席は顧客に探してもらうほうがいいし、セルフサービスが前提になっていく。当然のように受け入れていたその当たり前が、だんだん消えていっているのが、今の都心なのだ。
一方で、庶民の憩いの場になっているサイゼリヤの運営は、高い収益性に支えられているわけではない。
前述した26年8月期第2四半期決算では、日本セグメントは売上高は961億2400万円(前年同期比20.4%増)、営業利益は33億6700万円(同422.8%増)と、増収増益ではあるものの、営業利益率は3%台にとどまる。こうした構造では、家賃が倍増するような外部コストを、個別店舗で吸収することは難しいだろう。
同店の閉店は、こうした環境が都心で維持しにくくなっている状況を示している。地価上昇と再開発が進む都市において、誰でも利用できる商業空間をどのように維持するか。この課題は、外食に限らず小売業全体にも広がっていく可能性があるだろう。
東京都福祉保健局生活福祉部「店舗等内部のユニバーサルデザイン整備ガイドライン」(2010年5月発行)
水野智美・西館有沙・徳田克己(2020)「フードサービスの店舗におけるバリアフリーの状況と課題1――店舗内外へのアクセスを中心に――」『障害理解研究』第20号、15-28頁
