前編では、かつて6つの百貨店が存在した八王子市で、出店ラッシュから全滅するまでの経緯を追った。甲州街道沿いの先発組が駅前への商業重心の移動によって壊滅し、最後まで残ったそごうも2012年に閉店。
なぜ、これほど多くの百貨店が八王子に根付かなかったのか。実は原因は百貨店がやってくるよりも前、まだ一軒も百貨店が存在しなかった1958年にまで遡る。
百貨店を呼び込む要因となった一冊の報告書
1958年(昭和33年)、八王子市が公益財団法人政治経済研究所に委託して作成した『八王子市産業振興基礎調査書』に、気になる一文がある。「ことに将来、工業都市としての発展の傾向が明かになって来ると、いまではまだここに1店も現れていない百貨店が何らかの規模と形で進出して来る可能性は強いとみなければならない」(p.139)。
この報告書は工場誘致対策を策定するために作成されたもので、八王子市長・野口義造が序文で「本市の立地条件について広範囲に亘りその実態をよく把握し得たもの」と太鼓判を押している。
報告書が発行された2年後の1960年、まるき百貨店が開店した。百貨店がやってきたのは時代の流れではなく、市が打ち出したこの街への期待だった。



















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