前回までは、6つの百貨店を抱えた八王子市の出店ラッシュから全滅までの顛末、そしてその根本原因となった「消費センター」という幻想を追った。
ここで気になってくるのが、百貨店も大型店も消滅した駅前に何が残っているのかだ。廃墟化しているのかと思いがちだが、実際に歩いてみても衰退の気配は微塵もない。多くの人が行き交い、一見すると賑わいのある街が生まれている。
しかし歩き続けるうちに、ひとつの違和感が拭えなくなった。人はこんなにいるのに、どこにも「滞在」していないことだ。前回で追った「商圏の幻想」の答えが、街の風景としてそこにあった。
①賑わっているのに、消費の気配が薄い
JR八王子駅の改札を出ると、人の流れがある。ペデストリアンデッキを渡り、北口・南口・甲州街道へ延びる西放射線ユーロード方面へと散っていく。しかし「買い物を楽しんでいる」という感じではなく、みんな目的地に向かって歩いていて、立ち止まっている人が少ないように見える。
実はこの構造は、1993年の調査でも指摘されていた。JR八王子駅の1日平均乗降人員は平成3年時点で7万5250人に達していたが、中心市街地への来街者のうち「JR八王子駅ビルと駅周辺地区」が56.5%を占める一方、「かつての甲州街道、現在の国道20号の横山町と八日町での利用率は19.9%」にとどまっていた(『不動産研究』日本不動産研究所、1993年)。当時も駅は人で賑わっていたが、街には滞留していなかったのだ。



















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