店内を見渡すと、客層の幅広さが目立つ。1人で利用する高齢男性、子ども連れのグループ、学生同士の来店など、年齢や人数、利用目的はばらばらだ。特定の層に偏らず、多様な利用者が同じ空間に共存している。
注文はQRコードに対応しているが、各テーブルには呼び出しボタンも設置されており、操作に不安がある場合でも店員を呼べる。こうした複数の注文手段が用意されていることも、利用のしやすさにつながっている。
「誰でも居られる」場所がどんどん減る都心
サイゼリヤで感じた「誰でも居られる」感覚は、近年の再開発空間では得にくくなっているように思う。
たとえば、25年9月12日に開業したニュウマン高輪には、オープン直後からさまざまな指摘が寄せられている。生活実態とかけ離れたコンセプトや、回遊しづらい導線設計などが話題となった。
なかでも注目されたのが、大階段の構造だ。一見すると1段に見えるが、実際には3段分の段差があり、視覚的な錯覚によって転倒のリスクが指摘された。現在は上部から降りられないよう制限されている(後述するが、目に持病を抱えた筆者は、ニュースを見ただけで肝が冷えた)。
また、意匠性を優先した暗い通路や、薄暗い場所に設置されたフロアマップも、利用者によっては使いにくさにつながる。とくに視覚に不安のある人にとっては、こうした設計は情報が読み取りにくい空間になりやすい。
こうした傾向は、飲食空間にも見られる。近年は、デザイン性やコンセプトを重視したフードコートが増えている。たとえば、虎ノ門ヒルズ内の「T-MARKET」や、新宿の「re:Dine」などは、従来のフードコートとは異なり、内装や雰囲気に特徴を持たせた大人向けの空間として設計されている。
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【「顧客の取捨選択」をするフードコート】
