東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

日銀総裁、中東情勢の混乱を受けても大きな景気の下振れがなければ利上げに踏み切る可能性があるとの見解を示す

3分で読める
(写真:ブルームバーグ)

日本銀行の植田和男総裁は28日、中東情勢の混乱を受けても大きな景気の下振れがなければ利上げに踏み切る可能性があるとの見解を示した。政策金利を維持した金融政策決定会合後の記者会見で語った。

今後の金融政策運営について、成長率が少し低下する場合でも、景気が大きく下振れない限り、物価の上振れリスクが顕在化すれば「利上げの可能性がある」と指摘。供給制約を強めるホルムズ海峡の封鎖が続いても、物価と景気のリスクを点検した上で、「場合によっては利上げという判断はあり得る」とも語った。

基調的な物価上昇率が2%に近づく中、物価が大きく上振れるリスクが顕在化して経済に悪影響を及ぼすか十分に注意する必要があると指摘。その上で、政策対応が後手に回るビハインド・ザ・カーブに陥らないよう、「次回以降の決定会合において適切に政策を判断していきたい」と話した。

記者会見する日銀の植田和男総裁Source: Bloomberg

日銀は同日の会合で政策金利を0.75%程度に据え置くことを賛成6・反対3の賛成多数で決めた。利上げに積極的な高田創、田村直樹の両氏に加え、中立とみられていた中川順子氏の3人の審議委員が反対した。政策委員会内で物価上振れへの警戒感が強まる中、植田総裁も改めて利上げ継続の必要性を表明した。

伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、植田総裁は会見で6月の可能性を伝えようとしてくれていたと受け止めている。物価の上振れリスクが高まっている中で、「利上げを見送る時間的余裕はもう次にはない」とし、次回の6月会合での利上げを予想している。

金利スワップ市場が予想する6月会合での利上げ確率は足元で約66%となり、会合前の60%程度から上昇した。

総裁は就任後の会合で初めて3人の反対票が出たことに関し、「深刻に受け止めないといけないと思っている」と言明。賛成した6人については、物価の上振れリスクは気にしているが、直ちに利上げで対応するところまでの緊急性はないというのが平均的な判断だったとの認識を示した。

原油価格上昇がこれまで以上にさまざまな財やサービスの値上げに波及しやすくなっている可能性があると説明。こうした動きが予想物価上昇率の上昇を通じて「基調的な物価上昇率の押し上げにつながりやすくなっている可能性がある」と語った。

外国為替市場では、植田総裁の会見中に円相場が対ドルで再び下落に転じ、一時159円69銭を付けた。発言が特にタカ派ではなかったとの見方から円が売られた。

政策維持

会合では金融政策運営について、重視する基調的な物価上昇率が「2%に近づいている」とし、「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と説明。物価上振れリスクの顕在化に利上げで対応する可能性を示すなど利上げ路線を継続していく姿勢を明確にした。

新たに公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、26年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しを前年比2.8%上昇と従来の1.9%上昇から大きく引き上げた。一方、実質国内総生産(GDP)見通しは、26年度を0.5%増(従来は1.0%増)、27年度を0.7%増(同0.8%増)に下方修正した。

野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジトは、総裁会見について「植田総裁にしてはタカ派な印象を受けた」という。中東情勢次第としながらも、インフレリスクを考えた場合には「6月利上げの可能性は十分ある」との見方を示した。

--取材協力:氏兼敬子、横山恵利香、深瀬敦子.

著者:伊藤純夫、梅川崇、藤岡徹

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象