そのような状態の作家にとって、成功への道筋を示しているつもりのアドバイスは、重荷になる。だからこそ、アドバイスは「すれば良い」という単純なものではないのだ。
必要なのはアドバイスではなく…
もう1つ、経験の中で気づいたことがある。人は、アドバイスを求めているようで、実は受け取る準備が整っていないことがある。「教えてください」と言われたからといって、言われたことをすぐ実行できるとは限らない。伝えた瞬間、相手の表情に曇りが差す。
「でも……」「そうは言っても……」と理由を探し出し、距離を取る。その反応を見て、伝わっていないと思って、強く言い直してしまう。すると余計に、言葉が遠のいてしまう。
僕の側だけでいいアドバイスができるようになろうと努力しても、意味がない。創作が、作家と編集者の共同作業であるならば、アドバイスではなく、双方向的なフィードバックをできるようにならなくてはいけない、と次第に思うようになっていた。
フィードバックは、内容だけでなく、関係性とタイミングがものを言う。言葉の表面ではなく、相手の内側を見つめなければならない。そして、それが簡単ではないことも、痛いほど思い知った。
あるとき、ふと我に返った。僕が「ダメ出し」や「アドバイス」として伝えてきた言葉は、結局のところ、自分の中の正しさに照らした判断に過ぎないのではないか? 編集者の役割とは、本当に「正解」を示すことなのだろうか?
編集者は「正しさ」を捨てて、周りから舐められるくらいいい加減なほうが、対話は弾むのではないか。そんなふうに僕は考え始めた。

