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衰退するアルゼンチンの公園で触れた「85歳の誇り」—日本の未来を重ねた取材で、心に突き刺さった"重い問い"とは

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アルゼンチンの公園で、ピザを分け合いながら自分の人生を語る85歳の老人(イラスト:堀江篤史)
  • 泉 秀一 ノンフィクションライター
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事情を聞くと、夫から暴力を受けていて、どうしようもなくなって家を飛び出してきたのだという。行く場所がなく、子どもたちを連れて夜の公園に来るしかなかった。

おじいさんは当時、ボカのアパートに住みながら、出身地の地方に小さな一軒家を持っていた。ちょうど空いていたその家に、母親と2人の子どもを住まわせることにした。

「3人を連れて行って、そこで暮らすようにさせたんだ」

おじいさんはさらりと言ったが、深夜の公園で出会ったばかりの見知らぬ親子に、自分の家を差し出す決断は、そう簡単にできるものではない。しかし、話はここで終わらなかった。

数年が経ったある日、子どもの1人が「医者になりたい」と言い出した。アルゼンチンでは国公立大学の学費は無料だが、地方からブエノスアイレスに出てくるとなれば、生活費や家賃がかかる。母親にその余裕はない。

おじいさんは、自分の給料から、その子のアパート代を支払った。長距離バスの運転手として決して多くはない収入から、生活費を出し続けた。

「その子は、医学部を卒業して、今は医者をやっている。病院で、いろんな人の命を救っている」

そして、話をこう総括した。

「長距離バスの運転手として、毎日変わり映えのない日々をずっと過ごしてきた。でも、あの夜この公園で出会った親子を助けて、医者を1人育てたことが、僕の人生の誇りだ」

元・帰還兵も語る

そこへ、別のおじいさんがピザを手に持ってベンチに現れた。2人は旧知の仲らしく、自然にピザを分け合い始めた。後から来たおじいさんが、会話の流れを受けて、こう言った。

「誇りといえば、俺にもあるよ」

彼は、1982年のフォークランド紛争(現地ではマルビナス戦争と呼ばれる)の帰還兵だった。

(イラスト:堀江篤史)

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【自分に突きつけられた問い】

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