2026年の春闘も、主要な大手企業を中心に労働組合の要求に応じた満額回答が相次いだ。労組の中央組織・連合が4月上旬に発表した第3回集計結果では、ベアと定昇を合わせた賃上げ率は平均で5.09%と3年連続で5%台をキープ。課題だった中小企業も5.0%となるなど、空前の賃上げラッシュの様相だ。
また完全失業率はここ数年2%台半ばと低位で推移しており、有効求人倍率も1倍を上回る求人超過が続いている。こうした労働需給の逼迫による働き手が優位な「売り手市場」を背景に、収入面での待遇改善は大手、中小を問わず大きく進んでいる。
一方その裏で、多くの人の働き方を抜本的に変えかねない議論が、ここに来て急浮上している。
急浮上した裁量労働制の対象拡大
「裁量労働制の見直しなどの柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進める」
高市早苗首相は2月の施政方針演説で、裁量労働制の見直しの方針を表明した。裁量労働制とは実際の労働時間に関わらず、あらかじめ労使で決めたみなし労働時間を基に賃金を支払う制度だ。現在は研究・開発や取材・編集など20の職種(専門業務型)と、事業運営に関わる企画、立案などの業務(企画業務型)に限られている。
高市首相の見直し発言は、この対象業務の拡大を意図したものとみられる。政府は日本成長戦略会議の下に「労働市場改革分科会」をつくり、3月に初会合を開いている。
昨年秋の自民党総裁選の公約に労働時間規制の緩和を掲げ、政権発足早々にその検討を厚生労働相に指示するなど、高市首相の本件への意欲は強い。労働時間規制の緩和の方法としては残業上限の引き上げなども選択肢になるが、今回まず裁量労働制に照準を合わせたのは経済界の強い要望が背景にある。
経団連はこれまでも長年にわたって裁量労働制の対象拡大を訴えてきた。目下も残業上限の規制は維持すべきとしつつ、裁量労働制については「拡充は喫緊の最重要課題」と位置づけ、過半数労組と合意すれば対象業務を拡大できるような仕組みの導入を求めている。具体的には営業職やコンサル業務への拡大を意図している。
経済界の悲願にもかかわらず、これまで対象拡大が容易に進まなかったのは、裁量労働制が長時間労働を助長し、過労死のリスクを高めるという懸念を拭えないためだ。
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【「定額働かせ放題」になりかねない】
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