テーブルの上にお雛様が飾られ、壁には韓国の伝統工芸・ポジャギがかかっている。本棚には日本語の本と韓国語の本が並ぶ。この家で20年、稲川右樹さんとキム・ハナさんは「よく喧嘩し、それでも手をつなぐ」夫婦であり続けてきた。
右樹さんは帝塚山学院大学で韓国語を教える教授、ハナさんはポジャギをテーマにした作品をつくるアーティストだ。
結婚生活において難しいのは「価値観のすり合わせ」だとよく言われる。国籍が違えば、その隔たりはなおさら大きい。それをどのようにすり合わせていったのか。稲川夫婦が20年かけて見つけた答えは、「解決しないこと」だった。
「自分の子を他人扱いしないで」妻の言い分
「僕らは性格が全然違いますし、お互いに譲らないのでよく衝突しますね」と右樹さんは笑う。ハナさんは「性格の違いもそうですが、やっぱり生まれ育った国の常識や文化の違いも大きいです」と話す。
稲川夫婦が衝突する理由のほとんどは、子供にまつわることだ。稲川家には大学3年生と大学1年生の娘がいる。右樹さんは「子供たちには、自分のことは自分で決めさせたほうがいい」と考えるが、ハナさんは「大事なことは親と話したり、時には親の意見を取り入れたりすることも大事だ」と思っている。
家庭による違いもあるので一概には言えないが、日本に比べて韓国は家族間の距離がかなり近い傾向があるそうだ。よくいえば連帯感が強く、悪く言えば干渉するとも言えるかもしれない。
「韓国では、家族は何かあったときにすぐ助け合うべきだと考えます。見方を変えれば、親が子供の世界に踏み込んでくるとも言えます。でも、不安なときに誰かがくれたアドバイスで救われた気持ちになることもある。彼の考えもわかりますが、自分の子供なんだから他人みたいに接しないでほしいと思うこともあります」
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【意見の食い違いは多い】
