しかし、あらゆる感情の混乱に対する解毒剤として教条的に「いま」を処方すれば、二つの重要な真実を見失ってしまう。
第1に、常にいまこの瞬間に生きようと努力する人は、それが不可能であるがゆえに挫折するだろう。人間の精神はタイムトラベルができるように進化した。
一つの「いまここ」の経験から次の「いまここ」の経験へと移行しながら、生涯の大半を瞬間の中で生きる種も存在する。こうした種は、複数の脚と大きな触角を持つ傾向がある(ゴキブリやクモなど、這い回る不気味な生き物を想像してほしい)。
心の中でタイムトラベルできる能力こそ、これらの不気味な生き物やその他のあらゆる種とわれわれを分かつものだ。それは、過去の経験を理解し、未来を計画し、革新し、創造することを可能にするきわめて重要なツールなのである。
常にいまこの瞬間に生きようと努めることで見失ってしまう第2の真実は、実のところわれわれは、もっと効果的にタイムトラベルする方法を学べるということだ。
「いまこの瞬間に生きろ」と戒められる理由の一つは、われわれがネガティブな過去や未来に囚われつづけてしまう点にある。これは確かに不健全だ。
しかし、過去や未来と向き合えなければ、過去の知識に基づいて適切な決断を下したり、この先数年間の計画を立てたりすることはできない。いまこの瞬間に生きることは、ときとして素晴らしいことだが、常にそうであるとは限らない。
過去の自分から現在の自分を眺めてみる
次に危機的な状況に陥ったときは、タイムトラベルの能力に頼ってみてほしい。それはわれわれのアキレス腱であると同時に、ある種のスーパーパワーともなり得るのだ。
過去へさかのぼってみよう。
あなたの人生で今回と似たような経験をしたのはいつのことだろうか? そのときはどうやって乗り越えたのだろうか?
過去の経験から得たもので、いまも利用できるのは何だろうか?
もっとひどい経験をしてきたのなら、これを乗り越えられるはずだ。
目下直面している状況よりもつらい経験をしたことがなくても、過去の経験が何らかの形であなたに準備をさせているはずだ。

