ここにさらに、学年によるズレが加わります。学年が上がると、子どもたちは急に大人びて見えます。指示どおりに動かない、反応が変わる。「生意気になった」と感じることもあるでしょう。
逆に学年が下がると、説明が伝わらない。「どうしてわからないのか」と戸惑う場面も増えます。しかしこれは、子どもが変わったのではなく、教師の前提が変わっていないだけです。
このとき、最もやってはいけないのが「比較」です。「前のクラスはもっとできていた」「去年の子たちはこうだった」など、この言葉は、学級を壊します。
これは別の場面で考えればわかります。新しく関係を築こうとしている相手に対して、「前の人はこうだった」と言われれば、誰でも不快に感じるはずです。
学級も同じです。比較された瞬間、子どもは「受け入れられていない」と感じます。信頼関係は、その時点で大きく揺らぎます。
ここで重要なのは、「4月は教師も新人」だという視点です。子どもだけが新しい環境に入るのではありません。教師もまた、新しい学級に入る1人です。
いわば、教師もまた「新入生」なのです。まだ関係はない。まだ信頼もない。これから築いていく段階です。にもかかわらず、教師は無意識に「できて当然」という前提で見てしまう。これがズレを生みます。
必要なのは期待ではなく謙虚さ
だからこそ必要なのは、期待ではなく謙虚さです。4月は、まず自分を知ってもらう時期です。
どんな教師なのか。何を大切にしているのか。どんな教室をつくりたいのか。それを丁寧に伝える。ここで大切なのは、「子ども理解」だけでなく、「教師理解」という視点です。
教育の世界ではよく「子ども理解が大事だ」と言われます。もちろん、それはそのとおりです。しかし4月の段階では、それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、「教師を理解してもらうこと」です。
自分はどんな人間なのか。どんな価値観を持っているのか。どんな願いを持ってこの教室にいるのか。それを子どもに伝えること。
これは実は、4月最初の自己紹介の段階から始まっています。最初にどんな言葉をかけるのか。どんな願いを語るのか。そこで教師の姿勢は伝わります。同時に、「あなたのことも知りたい」という姿勢を持つ。
人間関係は一方的には成立しません。相互の理解から始まります。教師理解とは、「指示する人」ではなく、「1人の人間として関係を築く」という姿勢でもあります。
次ページが続きます:
【なぜ5月に明暗が分かれるのか】
