AIにはインプットしようのない、人と人の間にある感情。それを読み取り、問いとして言語化することが、コンサルタントにしかできない仕事だという。
問いを立てた先にあるのが、経営者の意思決定を促す仕事だ。ここでも、人間同士の信頼関係が鍵を握る。
「どんなにデータが揃っていても、最後は『あの人がそこまで言うんだから、信じてみてもいいかもしれない』という人間的な判断があるんです。その関係性をどれだけの経営者と作れているか。これが決定的に大事です」
経営者が意思決定したら、実行しなければならない。だからこそ、提案する側の人間が途中で「やっぱり無理でした」と言うことは許されない。
「経営者は見ています。この人間は本当にそれを信じているのか。助けてくれと言ったら、最後まで助けてくれるのか、と」
時にコンサルタントは「悪者」にならなければならない。人事の問題であれば、代わりの候補まで準備した上で、「この意思決定をおすすめします」と踏み込む。
「A.T. カーニーさんが交渉してくれるのですか」
3つ目の価値、「現場を動かす」について、針ヶ谷氏の哲学は明快だ。コンサルタントが代行してはいけない。
「我々がいなくなったら止まりましたという状態が、最も良くない。大事なのは、現場のリーダークラスの方がその先をグリップして動かせる状態にすることです」
たとえば調達プロセスの改革。クライアントからは「A.T. カーニーさんが出て交渉してくれるのですか」と聞かれる。答えはノーだ。
「必ずお客さんに自分で出てもらいます。ただし裏側で、どういう交渉戦術で臨むか、スクリプトを全部書いてお渡ししますし、あらゆるシナリオに備えて、相手からこういうことを言われると思うので、こう返してくださいというところまで準備します」
最初は「こんなこと言って大丈夫なのか」と不安がっていたクライアントが、成果を出すうちに変わっていく。
