「いわゆるプロジェクトを回す仕事――議事録を取って宿題を管理するような仕事は、まさにAIが代行していくでしょう。でも、本質的にお客さんを変えるという仕事は、むしろ先鋭化して残っていくと思います」
「問いを全部挙げるのはAIがやってくれる。でも――」
3つの価値のうち、最も重要だと針ヶ谷氏が考えるのが「問いの特定」だ。
針ヶ谷氏には、プロジェクトが始まるたびに必ず行うルーティンがあるという。
「最初の30分で、このお客さんの何が変われば最も効果が大きいのかを考えます。もらっているスコープをいったん忘れて、白紙で考える。ジュニアメンバーにもよく言うんです。今日のタスクを全部忘れて、このお客さんのために何をやるべきかだけを30分考えてごらん、と」
「課題は何ですか、と聞けばいくらでも出てきます。AIも列挙してくれる。でも、経営者が本当に先に解かなきゃいけない問いは、実はそんなに多くない。どんな経営者でも、本質的な問いを10個も抱えていたら解ききれない。2つか3つなんです」
ただし、その本質的な問いの特定は、ロジックだけでは到達できない。そこには組織の力学、人間関係、そして経営者個人の感情が複雑に絡み合うからだ。
「たとえば、AIがロジカルに分析すれば『この投資ポートフォリオの配分を決めれば答えは出ますよね』となる。でも、実際のボトルネックはポートフォリオではなく、人や組織の配置だったりするんです」
適切な人材を適切なポジションに配置しなければ、どんな戦略も実行できない。しかしその人事判断は、社内では事実上の「降格」に映ることもある。経営者はそれをわかっていても、決断できない。
「経営者個人しかわからない『情』があるんです。この人材をどう活かすべきか、頭ではわかっている。でも踏み切れない」
