三重県尾鷲市では、漁師と寿司店が協力し、アカヤガラやオオメハタを寿司ネタとして提供しています。
こうした動きは、あまり知られていないマイナー魚・未利用魚・低利用魚の価値を高めるだけでなく、地域漁業を経済的にも支える新しいモデルとなっています。
気候変動によって漁獲量が増えている魚種もあります。近年では、温暖化の影響で南方系の魚が北上し、北海道ではブリやフグに代表されるこれまで見られなかった魚が獲れるようになりました。こうした「新来魚」も地域の寿司ネタとして定着していく可能性があります。
寿司は、季節や地域によって柔軟に魚を使い分けてきた文化です。だからこそ、新しい魚にも対応できるし、変化を受け入れる力があります。
寿司という伝統的な枠組みの中で、まだ知られていない魚を光の当たる場所に引き上げる。それは、食文化の多様性をさらに高め、地域の水産業を支える新しい経済活動でもあります。
マイナー魚・未利用魚・低利用魚の活用は単なる“素材の発掘”ではなく、寿司文化そのものを刷新するチャレンジだということです。
素材の選択肢を増やすことで、水産資源の持続可能性を高めると同時に、寿司産業の競争力を強めていくことができます。また、消費者にとっても新しい味の発見につながります。
「知られていない魚を寿司ネタにする」ことは、「魚が獲れなくなったらどうするか」という大きな問いを前に取るべき具体的なアクションの1つとも言えるでしょう。
代替魚肉、培養魚肉はどうか
世界の水産物の生産は、これまで「漁業」と「養殖」という二本柱で支えられてきました。しかし今、第3の選択肢として「細胞培養」が登場しています。細胞培養とは、魚の細胞を取り出して培養して増やし、魚肉をつくり出すことです。
元々はSFで語られていた技術ですが、すでに現実のものになっています。
細胞培養では、生きた魚から採取した少量の筋肉細胞や脂肪細胞を増殖させ、例えば切り身の姿に成形して利用します。つまり魚を「獲る」「育てる」のではなく、「魚肉を増やしてつくる」という新しい発想です。
注目すべきは、こうした技術の上に出来上がった培養魚肉が、海外ではすでに販売にまで至っているという点です。
アメリカのスタートアップWildtype社は、2025年5月28日、開発した培養サーモンについて食用として安全性評価をクリアし、ポートランドのレストランにて提供しました。このことは、「培養魚肉が寿司ネタになるための第一歩を踏み出した」ともいえるでしょう。
日本においては、培養肉製造の国内スタートアップであるインテグリカルチャーと水産大手のマルハニチロ(現Umios)、蒲鉾製造を手掛ける一正蒲鉾の3社が共同で培養魚肉をつくる研究開発に取り組んでいます。また、マルハニチロは2027年度を目標に、商品化を目指すとしています。
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【人気寿司チェーンも参入?】
