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「お好み焼き3000円」とインバウンド価格が批判される黒門で、《マグロ一筋90年》老舗が貫く「まっとうな商売」の信念

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もともとは兄が店を継いでいたのだが別の仕事に移ることになり、「兄弟で店をするのは揉める原因になる」と、入れ替わりで丸山さんが店に入った。決まったのは大学4年生、就職活動の真っ只中だった。

「サラリーマンより商売人のほうが金儲けできるかなっていう、単純な理由ですわ。あとは親を安心させたいっていうのもあって」

決断した理由を、丸山さんは淡々と説明する。

しかし、大卒でいきなり畑違いの仕事が難しいことは想像にかたくない。しかも二代目は、自分もそうやって覚えたからか、何も教えてくれなかったそうだ。70歳まで番頭として店に残ってくれたものの、目利きも技術も経営も、手取り足取りの指導は一切なし。丸山さんは仲卸人に質問し、マグロを自分の目で見て、触って、嗅ぎながら、すべてを独力で身につけていった。

ただ、まったくのゼロからだったかというと、そうでもない。丸山さんには一つだけ、持っているものがあった。

店頭のショーケースには、さまざまな産地から届いたマグロが塊で並ぶ(写真:筆者撮影)

小学生の舌が覚えた「本物の味」

丸山さんには忘れられないマグロがある。幼い頃に父が店から持ち帰った、北海道・噴火湾の中トロだ。

噴火湾は、津軽海峡のすぐ上に位置する。当時は、津軽海峡を挟んですぐの「大間のマグロ」が、ブランドとして知られる前の時代。小学生だった丸山さんは、その一切れで「本物のマグロのおいしさ」を知った。

「香りがよくて、甘みがあって。濃厚だけれど後口はあっさり、口に残らない上品な脂が広がりました。一言で言ったら、『旨みが強い』マグロやったね」

当時を思い出したのか、少しうっとりとした表情を浮かべる丸山さん。この味が、マグロの目利きの原点になった。そう考えると、父は何も教えてくれなかったが、「基準」を残してくれたのかもしれない。

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