「給付付き税額控除」の前に寄り道すれば「食料品消費税ゼロ不況」の最悪事態・・・買い控えの反動増なく、かえって物価高騰

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飲食料品の買い控えがなくなっても、それで終わりではない。

前述のように、標準税率との税率差が大きくなる分、消費税の立て替え負担に耐えられない農家や漁業者や飲食料品販売業者が廃業する恐れがある。特に、食料品消費税ゼロの実施までに買い控えに直面して、利益を減らしているからである。

免税業者も他人事ではない。ただでさえ、農家や漁業者は高齢化が深刻であるうえに、食料品消費税ゼロが引き金になって売値の引き下げ圧力に直面すると、それに耐えられず廃業を選択するおそれがある。

農家や漁業者や飲食料品販売業者が廃業しただけでは、日本のGDPに大きな影響があるとまではいえない。しかし、農家や漁業者や飲食料品販売業者が廃業することで、飲食料品のサプライチェーンに悪影響が及ぶ。

物価高対策のはずが、かえって物価高騰も

食料品消費税ゼロで税込み価格が7.4%引き下がると思いきや、サプライチェーンの途絶による飲食料品の物価高騰がそれを上回って起きかねない。

加えて、必需性の高い飲食料品は、値上げしても需要が減らないという消費者行動の足元を見て、(資金的余裕があって廃業の危機を乗り越えて生き残った)生産者は税込み価格を下げるが税抜き価格を上げるという事態が起きる。それでは、飲食料品全体の物価は下がらない。

ただでさえ、消費税と無関係に、天候不良に伴う農産物の不作や海産物の不漁、鶏卵の「エッグショック」といった、原材料費高騰によらない要因で、生鮮食品の物価上昇率が10%を超えるような事態が散発している。サプライチェーンの途絶によって生鮮食品の物価高騰が容易に起きうるのが、わが国の現状である。

食料品消費税ゼロによる廃業の増加が、その発端になると、どうなるか。

食料品消費税ゼロを実施しても飲食料品の消費者物価は想定ほど下がらない。そして、消費者にとって、飲食料品の消費額を減らすことができないために、他の消費財の需要喚起への波及という民間消費の活性化が起きないまま、物価高騰に伴う消費低迷が続く恐れがある。

物価高に苦しむ人には「給付付き税額控除」で支援する

「食料品消費税ゼロ不況」を避けることは簡単だ。食料品消費税ゼロをやめることだ。食料品消費税ゼロをやめる代わりに、物価高騰に苦しむ低中所得層への「給付付き税額控除」を実施すると、支援が必要な人たちを助けられる。

例えば、いま年間に税込みで108万円の飲食料品消費をしている家計は、消費税を8万円払っている。食料品消費税ゼロにすれば、手元に8万円残る。

これに対して、食料品消費税ゼロの代わりに低中所得層への「給付付き税額控除」で、給付10万円を出せばどうか。税込みで108万円費やしてはいるが、手元に10万円残る。そのうえ、食料品消費税ゼロに伴う廃業もない。両者を比較すれば、全員が前者よりも後者のほうを選ぶはずだ。

消費減税に寄り道せず、「給付付き税額控除」の早期導入を目指すべきである。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶応義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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