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林望「本は再読、三読にこそ価値がある」 世阿弥の教えに学ぶ、人生の節目で"新たな自分"に出会う読書の醍醐味

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手元に本を置き、鈍行列車の旅のように言葉を玩味する、一生ものの読書法とは?(写真:bee/PIXTA)
  • 林 望 作家・書誌学者

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「初心忘るべからず」という世阿弥の言葉の真意とは? 作家・林望氏は、人生の経験を積んだ「時々の初心」こそが、再読の喜びを深めると説きます。若い頃には見えなかった行間が、老年になって分かるようになる。本稿では『書物を楽しむ あえて今、紙の本を読む理由』より一部抜粋のうえ、手元に本を置き、鈍行列車の旅のように言葉を玩味する、一生ものの読書法を提言します。

手持ちの本を再読する楽しみ

本は一度読んだらそれっきり、というものもありますが、しかし、もっと価値のあるものは、若いときに読んだ本を、その後も再読三読するという楽しみがあります。

私どもの脳には、読書の結果が記憶として蓄積されていきます。それらが集積する結果、あるいは種々の人生経験を積んだ一得(いっとく)として、若いころには理解できなかった「行間」が読み取れるようになったりもします。年月を隔てて再読すると、そんな機序によって、昔よりもずっと深い感銘を受ける、というような経験はいくらもあります。

人間は、経験を積めばその分、いわゆる読解力や理解力はもちろんのこと、自分の経験と照らし合わせて、味読する力や鑑賞する力も増してまいります。

いくら読書家でも、小学校の子どもに『源氏物語』のような古典に描かれている「後朝(きぬぎぬ)の別れ」などのことは、実感として理解できるわけがありません。我々は年齢と経験を積み重ねていくにつれて、「こういう感じなんだな」というふうに、照応すべき経験が増えていく。だから、若いときには理解できなかったことが中年になって、または老年になってわかった、ということがいくらもあります。

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【老いても老人としての初心がある】

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