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林望「本は再読、三読にこそ価値がある」 世阿弥の教えに学ぶ、人生の節目で"新たな自分"に出会う読書の醍醐味

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手元に本を置き、鈍行列車の旅のように言葉を玩味する、一生ものの読書法とは?(写真:bee/PIXTA)
  • 林 望 作家・書誌学者
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「初心忘るべからず」という世阿弥の教えがありますが、これは若い時の気持ちを忘れるな、というような浅い教えではなく、人生はいくつになっても勉強や経験の積み重ねであるから、若い者には若者としての初心があり、中年になれば中年の初心があり、老いても老人としての初心がある、というように教えている言葉です。

つまり、人は常に自分の今が「時々の初心」だと心得て、謙虚に懸命に研鑽を積まなくてはいけない、そういう教えであります。

人生は一度しか生きられないから、若いときにはそれ以後の中年・老年のことは全く経験していない。だから、実感としては、わかりようがない。

中年になったとき、初めて直面するのはやはり初心

若いときの初心というのは、若いなりに一生懸命にやる心掛けだけれども、中年になったからもう初心はないかというと、そんなことはありません。誰しも人生は一回しかないのだから、中年になったとき、功成り名遂げたとき、そのとき初めて直面するのはやはり初心です。

人間には、かくして、老いての初心ということもある。つまり、どの年代においても人間は初心を持って、「これが一度きりの人生だ」と切実に思いながら大事に人生を生きよという教訓なのです。「初心忘るべからず」はなにも「始めたときのことを忘れるなよ」というだけの単純なことではなく、世阿弥の教えはもっと深いのです。

若いときにはここまでしかわからなかった。でも、子どもを持つようになってからわかった、老年になって老いの苦しみが痛感できるようになった……そういうふうにして、その年代ごとに再読、三読することによって、文章というものはその人に大事な知恵を授けてくれる。そう思うと、やはりそのとき「本が手許にあること」がどれほど大事なことか……。

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【図書館で借りて読んだ本の知恵は借りものの知恵】

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