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林望「本は再読、三読にこそ価値がある」 世阿弥の教えに学ぶ、人生の節目で"新たな自分"に出会う読書の醍醐味

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手元に本を置き、鈍行列車の旅のように言葉を玩味する、一生ものの読書法とは?(写真:bee/PIXTA)
  • 林 望 作家・書誌学者
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ふと思いたって「ちょっとまた読んでみようかな」と思ったときに、当該の本が手許にあればすぐ読める。そうすると、中年の初心、老年の初心で、その書物によって新たな命が与えられていく。

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これに対して図書館から借りた本は、それを返してしまったら、本の背表紙を目にすることもできず、以て当該の本の内容をリマインドすることもできない道理です。

だから、「図書館で借りて読んだ本の知恵は借りものの知恵だ」ということは、口を酸っぱくして何度言っても言い足りないくらい、私は強調しておきます。

手沢本ということにおいても、やはり紙の本でなくてはあり得ないことです。余白に書き入れることは、電子本では不可能です。

しかし、「いやいや、電子本にも栞機能がありますから、マークすることはできますよ」と言うかもしれませんが、電子の栞機能は、紙の本の栞や書き入れとはまったく違うものです。

たとえば、私は『源氏物語』を読んでいて、ここは名文だなと思う箇所には、上部欄外に赤線を引いて「ここ名文につきよく玩味せよ」などと欄外に書き入れています。そうして、何度読んでもそこは名文だと再認識する、といった楽しみ方をしています。これはなにも『源氏物語』に限ったことではありません。

ゆっくりやるほど価値がある

かれこれ、そういうことをしながらの読書なので、私は基本的に本はスロー・リーディングです。特急の窓から見る景色は一瞬のうちに流れ去って、印象に残らない。でも、鈍行列車に乗って窓を開け、車窓からの風を受けながら、ゴットン、ゴットンと揺られていって見る風景はゆっくりと楽しむことができる。

となれば、いっそ歩いて旅したらもっともっと楽しむことができます。つまり「The slower, the better」なのです。ゆっくりやるほど価値があるという、これが物事の経験律上の秘義だと思います。

さて、こうやってゆっくりとしたつき合い方で、本と向かい合っていると、本はいろいろなことを語りかけてくれます。

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