F1鈴鹿で実証した「26万人が集まっても決済や配信が滞らない」5G新設計が変えた大規模イベントの通信現場

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冒頭の決済エラーゼロは、このスライシングで実現した。物販エリアのGPスクエアに19台、ウエストスタンドに5台のモバイルルーターを置き、プライベート5Gで出店者の決済端末を接続した。F1日本グランプリでは弁当やキッチンカーを含め、来場者数の約2倍にあたる52万食分の飲食が提供される。決済端末はクレジットカード、電子マネー、QRコード決済のすべてに対応しており、そのトランザクションが昼に集中する。

決済に必要な通信速度は数Mbps、場合によっては1Mbps未満で足りる。動画やSNSとは桁違いに少ない。ただし途切れると決済が止まり、レジに行列ができる。速さより信頼性が求められる通信だ。

従来はこの決済の通信と、来場者がSNSに写真を投稿する通信が同じ回線を使っていた。昼どきに数万人が決勝レース前に写真を撮りインスタグラムに投稿すれば回線が混雑し、決済端末の通信まで巻き添えになる。スライシングで決済用の回線を分離し、最低速度を保証する制御を無線側に入れたことで、混雑の影響を受けなくなった。

鈴鹿サーキット
出店者に配備された決済端末とモバイルルーター。プライベート5Gで一般通信から分離して接続している(写真:筆者撮影)

万博の基地局が鈴鹿で再出発

通信品質のベースを支えるのは基地局の増強だ。ソフトバンクは鈴鹿サーキット内のMassive MIMO(大規模アンテナ)を昨年の約10セルから27セルに倍増させた。エリクソン製の最新型は3つの周波数帯を1台に集約し、従来の2台分の仕事をこなす。体積と重量は40%減った。年明けから2カ月半の突貫工事で設置を間に合わせた。

鈴鹿サーキット
鈴鹿サーキットの基地局前に並ぶソフトバンクとエリクソン・ジャパンの担当者。年明けから2カ月半の突貫工事で整備を間に合わせた(写真:筆者撮影)

ハードウェアの入れ替えだけではない。ネットワーク設計の担当者は「昨年は5Gだけでミリ波を完結できる設定になっていなかった。今年はアンテナも設定もすべて見直して、5Gだけで通信が完結する環境を整えた」と語った。この設計の全面的な作り直しが、6つのスライスを同時に走らせる土台になっている。

鈴鹿サーキット
鈴鹿サーキット道路沿いに立つ基地局。左の柱は頂上部にMassive MIMOのパネルアンテナ、中間部に万博から転用された茶色い塗装のミリ波基地局を備えている(写真:筆者撮影)
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