F1鈴鹿で実証した「26万人が集まっても決済や配信が滞らない」5G新設計が変えた大規模イベントの通信現場
実験の柱は「5G SA」と呼ばれる技術だ。SAはスタンドアローンの略で、5Gの設備だけでネットワークが完結する方式を指す。これまでの5Gは「NSA(ノンスタンドアローン)」と呼ばれ、実は裏側で4G LTEの設備に頼って動いていた。世界中のほとんどの携帯会社がこの方式で5Gを始めている。ソフトバンクは今年度、この4G依存から脱却するSAへの移行を一気に進めた。
SAになると何が変わるのか。最大の利点は「ネットワークスライシング」が使えるようになることだ。なお、ソフトバンクの5G SAは5G契約とSA対応端末があれば追加の申し込みなしで利用できる。ワイモバイルやLINEMOにはまだ提供されていない。
1本の道路を車線に分ける
スライシングとは、1つの通信回線を仮想的に複数の回線に分割する技術だ。藤野矩之インフラ技術戦略室長は高速道路に例えて説明した。「従来は1本の道路にすべての車が混在していた。スライシングを入れると、速く走りたい車は追い越し車線、安全にゆっくり走りたい車は走行車線と、分けて走れるようになる」。
鈴鹿では6つのスライスが同時に走っていた。ソフトバンクの5G SAユーザー向けの高品質通信、XRコンテンツ向けの低遅延通信、キャッシュレス決済向けの高信頼通信、ミリ波をバックホールにしたWi-Fi、フジテレビのカメラ向け映像伝送、そしてデモ用のプレミアム通信だ。同社によれば、これだけの数のスライスを大規模イベントで同時に商用提供するのは国内初だという。
取材した金曜の時点で、6つのスライスはすべて狙い通りに機能していた。筆者の端末で計測した一般向け高品質通信はダウンロード速度が1Gbps(自宅の光回線並み)を超え、決済は出店者からエラーゼロの報告があった。ソフトバンクの計測ではミリ波Wi-Fiに約200人が同時接続した状態で使え、フジテレビは朝の生中継を問題なく放送できた。用途がまったく異なる通信を1つのネットワーク上で同時にさばけたことが、この実証の成果だ。



















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