「ビジネスケアラー」という言葉に感じた強い違和感の正体、どこまで親の介護を担うかは自分で「線引き」していい

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・仕方なく、Aさんは単身実家で生活することにした(妻とは別居)。出勤に往復4時間。出勤前の早朝と帰宅後に母親の身のまわりの世話を行う。

・疲れ果て、遅刻、欠勤が増え、上司から「何か、あったか」と聞かれ、ようやく事情を話した。上司から「介護休業を利用すれば?」と提案されたが、「これ以上、職場に迷惑をかけることはできない」と考え、辞表を提出した。

・離職後、母親と24時間共に生活するようになった。家事すべてをAさんが担う。生活費は母親の年金をあてているが十分ではなく、足りない分はAさんの貯えを取り崩している。

・Aさんは、介護離職したことについてこう話す。「早まったかもしれません。いずれ、僕にも老後がやってきます。このままじゃ、そのころには、すっからかんだ。それに、別居中の妻からも責められています。『あなたの家族は、お母さん? 私?』と。いずれ、離婚になるかもしれない」。

Aさんは何を間違えたのか?

Aさんは、母親の介護のために離職したことを後悔しているようです。

当初、母親に対し退院後は、Aさんの家で養生することを勧めましたが、断られています。しかも、母親は介護保険のサービス利用も拒否しました。

介護経験がない人は、「この母親は、わがまま過ぎる」と思うかもしれません。しかし、レアなケースではないのです。高齢の親は、環境の変化を避けたいと考えることが多く、転居や施設入居はもちろん、介護サービスの利用も嫌がることが多く、親の介護を行う場合、最初のハードルとなりがちです。

しかし、親の意向だからと、それらを飲むと、Aさんのように、すべてを家族だけで担うことになります。

この段階で、Aさんが実家に移り、サービスを入れなかったことは失敗だったと言わざるをえないでしょう。地域包括支援センターという介護の相談窓口があるので、相談していれば、違った結果になったかもしれません。

母親にサービスを利用させるための算段を一緒に考えてもらえたと思います。また、多くの親は、子の声に耳を傾けてくれませんが、医師の言葉には従う傾向があります。主治医から、介護サービスの利用を提案してもらってもよかったでしょう。

もう1点、Aさんのしくじりは、上司から聞かれるまで、親の介護をしていることを職場に話さなかった点です。早い段階で話していれば、どのように仕事と介護を両立していくかを、一緒に考えることができたと思います。職場には、介護休業制度など両立するための支援制度があります。

Aさんは母親の介護が始まったことを職場に伝えなかった理由についてこう話します。「介護というプライベートなことを仕事に持ち込んで、職場に迷惑をかけたくなかった」。

これは、Aさんの誤解です。企業にとって従業員の離職は大きな損失です。支援制度の活用は会社と従業員の両方にメリットがあるのです。

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