出光興産は16日、中東の混乱を受けて千葉事業所(千葉県市原市)と徳山事業所(山口県周南市)で基礎化学品エチレンの減産を始めたと明らかにした。国内では減産を決めた拠点は6カ所と、全体の半数にのぼる。エチレンはプラスチックや合繊繊維などの原料で、幅広い製品に使われる。中東混乱の影響が長引き、エチレンの需給がひっ迫して価格が上昇すれば、飲食料の梱包材や衣料品などの値上げにつながる可能性もある。
出光の広報担当者は、原料のナフサの調達が困難になる中で、顧客への影響を最小限に抑えるために稼働率の調整を行っていると述べた。減産の開始時期やエチレン生産設備の稼働率についてはコメントを控えるとした。
日本は、ナフサの4割超を中東からの輸入に頼っており、ホルムズ海峡の封鎖が続けばインパクトは大きい。またナフサの輸入価格はイラン情勢を受けてすでに上昇している。
石油化学基礎製品のエチレンからは、プラスチックや合成繊維などが生産され、飲食料の梱包材や衣料品、家電、自動車などさまざまな製品に使われている。多くの産業に関わる重要な物質だ。日本では半導体が「産業のコメ」と呼ばれることが多いが、韓国ではエチレンを指す言葉として使われている。
「川下に行くほど、影響を受ける企業は膨大な数になるだろう」。英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエイツのシニアアナリスト、ジョエル・シェイマン氏はこう話す。「われわれが石油由来製品にどれほど依存しているかについて、真の警鐘となるものだ」と指摘する。
小売業界に詳しい消費経済アナリストの渡辺広明氏は、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、ペットボトル飲料や衣料品などの価格に影響を与える可能性があると指摘。また今回の中東混乱に伴うナフサ供給停滞を受けて、脱プラスチックについて消費者や企業が意識していく必要がありそうだと述べた。
ただ、すぐに化学品の供給が断絶する状況ではなさそうだ。経済産業省の担当者によると、エチレンから作るポリエチレンなどの化学品の製品在庫が国内需要の約2カ月分があるほか、各社が中東以外からの代替調達を模索しているとした。
国内にある約12カ所のエチレン生産拠点のうち、イラン情勢の影響による減産がこれまでに6カ所で判明。このほか定期修理のため停止中の3カ所のうち、住友化学とコスモエネルギーホールディングス子会社の丸善石油化学の合弁会社、京葉エチレンの千葉の設備の再稼働時期を延期した。
川崎にエチレン生産拠点を2カ所持つENEOSホールディングスの広報担当者は、稼働の詳細については開示していないと述べた。丸善石油化学の広報担当者によると、同社の千葉工場のエチレン設備は中東情勢が緊迫化する前から稼働率を抑制していたとした上で、イラン情勢の影響で計画は変えていないと述べた。
シェイマン氏によれば、中国の輸出増加による供給過剰のため、日本の石油化学メーカーは、米国とイスラエルによるイラン攻撃以前から、減産対応をとっていた。そのため「稼働率をこれ以上大幅に引き下げることは基本的に不可能だ」と指摘する。
--取材協力:香月夏子、小田翔子.
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著者:稲島剛史、アリス・フレンチ
