〈再び揺れる盟主〉「小学館マンガワン問題」で広がる波紋 性加害の漫画家を別名で再起用…メディア業界特有の課題も一因か

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当時の小学館側の調査報告書では、芦原氏がSNSで事態について発信するまで、現場社員の直接の上司がトラブルそのものを把握していなかったことが判明している。また、このSNS投稿には小学館の複数の社員が協力したが、法務室や広報室への相談もなかったという。

再発防止策の提言には「組織的な問題その他」として、次のように情報共有のあり方についての課題が示唆されていた。「定期的に上長に報告を上げるシステムを作っていれば、問題の早期発見に役立つし、対処の誤りも少なくなる。上司もより目配りの必要を感じるはずである」。

複数の漫画家が作品の配信停止を表明

『セクシー田中さん』問題をめぐり、業界内外からは厳しい視線が注がれ、SNSで小学館への誹謗中傷が寄せられるなど、影響は全社に及んだ。そして今回のマンガワン問題は、一段と深刻な事態に発展している。複数の漫画家がマンガワンにおける作品の配信停止や連載中止を相次いで表明しているのだ。

小学館が公表した、被害者への謝罪に関するリリース
小学館が公表した、被害者への謝罪に関するリリース(画像:小学館の公式ホームページより)

収益面での打撃にとどまらず、小学館と仕事をしてきた多くのクリエーターたちに、重い判断を迫る事態へと発展したマンガワン問題。今後の焦点は、山本氏による性加害の事実や被害者の要求を誰がいつ認識し、それが社内の各部門や経営層にどのように伝達されたかといった意思決定プロセスの事実究明、そして根本原因の分析だ。

「ビジネスと人権」に詳しい蔵元左近弁護士は、「メディア業界には『経営と編集の分離』という、表現の自由を守るための最重要原則があるが、この原則が人権・コンプライアンス上の問題への組織的対応をも阻む壁として機能してしまう場合がある」と指摘する。

編集部の独立性や、編集者とクリエーターとの密な関係性が今回の問題を引き起こした一因となったならば、日本のメディア業界全体における構造的課題や対策の検証が必要だろう。

社員数約700人の小学館には、相賀社長をはじめ20人超もの取締役がいる。被害女性、クリエーター、そして読者や取引先を包含する社会全体に対して、自社が問われている責任の重さを深く議論し、それに応える最大限の対応が求められる。

マンガワンに作品を配信するクリエーターたちの声や、非上場のオーナー企業でもある小学館に求められる説明責任などについて触れた本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「〈揺れる業界の盟主〉「性加害の漫画家」を別名義で再起用、小学館「マンガワン問題」の深刻度 事実究明に公への説明…今後の焦点は?」でご覧いただけます。
森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。広告・マーケティングとアニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「日本アニメ狂騒曲 第2幕」「シン・東宝」「孫正義 動き出した最終章」「メルカリの反省」「集英社、講談社、小学館の野望」「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」など。

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田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ゲーム・玩具、キャラクターなどのエンタメ業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、医療機器、食品など。趣味は東洋武術。日本証券アナリスト協会検定会員。

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