買った企業を1ドルで売った東芝、借金4兆円で「見えない資産」を爆買いした武田薬品…決算書から読み解く超有名企業による買収戦略の行方
買収したA社の会計で、買収されたB社のブランド価値は「のれん」という項目名で「資産」の欄に記載されるのです。
のれんといえば、一般的にはお店の軒先にかかっている布を想像するかもしれません。会計の世界では、暖簾(のれん)と混同しないように「買収のれん」と呼ぶこともあります。
2006年に東芝が米国の原子力企業ウェスチングハウスを買収しましたが、そのときの値段は54億ドル。しかしその後2017年にウェスチングハウスが破産し、東芝はその株をたった1ドルで売却しました。
ところがその1年後にはカナダの投資ファンドが46億ドルで買収、さらに2022年には79億ドルで再売却されています。
つまり東芝は大失敗をしてしまったわけですが、それはともかく、ブランド価値の価格は会社が売買されるまでわからず、売られたときに初めて財務諸表に記載されます。
株式の時価総額は「売れたときの値段」なので、同じ会社でも1ドルだったり79億ドルだったりするのです。
自社のブランド価値への値付けは禁止
買収されるそのときまでブランド価値の額がはっきりしないなんて、不便な気がするでしょうか。銀行に融資を申し込む際などに、「うちの資産は1億円だが、ブランド価値は3億円だ!」と財務諸表に記載できたら有利な気もします。
しかし、こうした「自己創設のれん」の記載あるいは計上は禁止されています。自己創設のれんとは、自社で確立したブランドや技術・ノウハウ、顧客資産などの無形資産のことです。
違反した場合は粉飾と見なされ、刑事罰や行政処分が科されることになります。
ブランド価値はその会社がつくり上げたものですが、自分でそれに値段をつけることはできないのです。
もうひとつ、買収のれんの実例を挙げておきましょう。2019年1月に、武田薬品工業(以下、武田薬品)は620億ドル(当時の為替レートで6.8兆円)で、アイルランドのシャイアーという製薬企業を買収しました。
武田薬品はいくつものヒット医薬品を持ち、高成長を遂げていましたが、それらの特許切れが迫っていたタイミングでした。
シャイアー社は利益率の高い希少疾患の新薬を持っていて、研究開発能力が高い上に、世界最大の市場である米国での売上比率も高かったのです。





















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