「結婚は不要、でも子どもは欲しい」――"戦略的シングルマザー"になった彼女の並々ならぬ覚悟。地方都市で直面した「両立」の厳しすぎる現実

✎ 1〜 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 17
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

出産してからは、子育てに奮闘する姿が見えるせいか、妊娠中に比べれば職場で表立っては非難されにくくなった。子育て中の同僚と、ママ同士として子育てについて雑談や情報交換をすることもある。

とはいえ、未婚であることで「幹部の愛人」といった噂が流れることもあるし、残業するBさんに「母親失格なのでは?」と言う人、「母親らしくない外見や働き方」などと批判する人もいるそうだ。

ただ、ネガティブな視線を向けるのは主に上の世代で、後輩たちからは憧れの目で見られることも増えてきたという点に、かすかな希望が見える。

「既婚・未婚を問わず、子どもを産むのは親の一存で、ある意味ではわがままであり、産んだのは自分の欲だという感覚を持っている」と話すBさん。

「今、息子はおそらく幸せと思っていて、自分に何かが不足していると思わずに生きているので、現時点では親としての責任は果たせている、と感じている」と言う。

あえてシングルマザーになる道を選んだという事情もあるが、学生時代から子育てと仕事の両立を実現するために熟考し、調査した用意周到さは、尊敬する。同時にそこまでしなければならなかった現実に、違和感も抱く。

「望んだ仕事をしつつ子育てをする」難しさ

今もなお、将来起こりうるさまざまな事態を想定しつつ、仕事と子どもの両方に向き合うBさん。彼女が歩むフルタイムワークと子育ての両立という道は、もしかする後輩世代には少しなだらかになるかもしれない。

東京で、曲がりなりにもワーキングマザーがキャリアを積む職場が珍しくなくなりつつあるのは、先行世代の女性たちが奮闘し道を切り開いてきた成果でもあるからだ。

彼女の周到なリサーチはまた、以前の記事でご紹介した、もともと子どもを欲しくなかったが産んだ女性たちの話を思い起こさせた。モチベーションのベクトルこそ違うが、仕事を手放さずに子育てするためという動機では共通している。

それはつまり、いまだ日本で女性にとっては、望んだ仕事をしつつ子育てをするのが当たり前ではない側面があるからだ。子育てしていても、自分が生きたいように生きられる。それが男性と同様、女性の普通になったとき、初めて少子化の傾向は弱まるのではないだろうか。

連載「産むも産まぬも
子がある理由も、ない理由もさまざまなのにもかかわらず、それについて互いで感想でも疑問でも意見でもざっくばらんに語らうことはない。いや、しないほうがいいのかもしれない。どんな生き方を選ぼうと、どこにたどり着いていようと、それぞれの選択やあり方は尊重されていいはず。本連載では多様な角度から「産む・産まない」「持つ・持たない」論に迫る。
阿古 真理 作家・生活史研究家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。

女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『おいしい食の流行史』(青幻舎)『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事