後編:坂東玉三郎がこの30年、真山仁に語ってきたこと
──お二人の出会いから教えていただけますか?
私が新聞記者からフリーになって1年目ぐらい。エンタメ系のインタビュー仕事が少しずつ入り始めた頃で、最初のきっかけは映画監督のアンジェイ・ワイダへのインタビューでした。
ワイダの話を少し先にすると、彼はドストエフスキーの『白痴』を舞台化しようとした際に、主役のナスターシャとムイシュキン公爵を1人で演じられる役者を世界中で探したそうです。メリル・ストリープをはじめ、いろんな女優に会ったけれど何かが違うと。
そんな中、京都の南座で玉三郎さんの『椿姫』を見た。「これだっ!」と衝撃を受けて、いきなり楽屋に押しかけて自己紹介し、「僕の舞台に出てほしい」と直談判した。それで玉三郎さんがナスターシャを演じることになった。
その大阪公演のプロモーションでワイダが来日した際、取材を担当しました。気難しい巨匠と聞いていましたが、なぜかとても楽しげで。終わった時、「いい質問で楽しかった」と褒めていただきました。その場に、ワイダのアテンド役として玉三郎さんのマネージャーが同席していたんです。
ある日、神戸にいる時に連絡があって、「今から愛知県の犬山に行けませんか?」と言うんです。明治村にある呉羽座という古い芝居小屋で玉三郎さんが舞踊公演をやっているから、終演後にインタビューしてほしいと。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら