アメリカが対ロシア制裁の一環として、東欧の小国セルビアの大手石油会社に圧力を加えている。10月9日、アメリカ財務省外国資産管理局(OFAC)はセルビアのガス大手セルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije, 略称NIS)に制裁を実行すると発表した。同社がロシアの石油大手ガスプロムネフチの傘下にあるためだ。
ロシアのガスプロムネフチがNIS社を保有
セルビア北部ヴォイヴォディナ自治州の州都ノヴィ・サドに本社を構えるNIS社は、同国で最大の石油元売り会社だ。そのオーナーであるガスプロムネフチに対してOFACは、ロシアのウクライナ侵攻を理由に制裁を科した。そのため同社は、保有するNIS社株の一部を親会社のガスプロムを譲渡して、NIS社を制裁の対象から逃そうとした。
こうしたガスプロムネフチの対応もあり、OFACはNIS社への制裁を見送っていた。しかし2025年1月に対ロシア制裁を強化した際、OFACはNIS社も制裁の対象に加えた。その後OFACは、NIS社に対して8回にわたる猶予を与え、制裁の発動を見送ってきたが、9回目の猶予を拒否したため、NIS社への制裁が発動される運びとなった。
制裁が科されると、NIS社はドル決済ができなくなる。同社は石油の備蓄は十分あるためセルビアのエネルギー事情は直ちに悪化しないとしているが、このまま制裁が科され続け、ドル決済ができないままだと、NIS社は原油を輸入できなくなり、国内の石油供給が枯渇してしまう。セルビア経済や雇用への打撃は極めて大きなものとなる。
セルビアの苦境を前に、隣国の対応は好対照だ。かつてユーゴスラビア連邦を共に組んでいたクロアチアの場合、OFACの決定に従ってセルビアへの原油の輸出を停止しているようだ。対して、経済的な関係を強めているハンガリーでは、同国最大の石油会社であるMOL社が、セルビアへの原油の輸出を強化する方針を示している。
この記事は有料会員限定です
残り 1619文字

