こうした記録の不整合はアメリカでは珍しくないため、それ自体が何らかの不正を示唆するものではないが、住宅ローン絡みの不正疑惑を政権側から持ち出され、トランプ氏が解任通知を行ったクック理事のケースを想起させる。
クック理事は2022年5月理事就任前の2021年に中西部ミシガン州と南部ジョージア州で取得した住宅をともにprimary residenceとして申告し、通常はどちらかしか適用されない優遇ローン適用を両方で受けた疑惑があった。連邦住宅金融庁(FHFA)のパルト局長から告発された。トランプ氏はこれを理由に8月25日、解任を通知。112年のFRBの歴史で大統領による理事の解任は初めてだ。
この解任は9月9日、ワシントンDCの連邦地裁が解任手続きの一時差し止めを命じたため実現していない。政権は連邦控訴裁判所に不服を申し立てたが、16日、棄却された。現在は仮処分をめぐる争いであるが、本案判決で敗訴した場合でも政権は最終的にトランプ派が多数を占める最高裁まで争う構えとみられる。
キーマンに急浮上! パルト氏とはどんな人物か
FHFAのパルト局長は、親から大手住宅建設会社を引き継いだ37歳。「Little Trump」と呼ばれるほどトランプ氏の忠実な部下だ。彼はトランプ氏がFRB批判を強めていた7月16日、自分のSNS(X)に「パウエルは終わった(Jerome Powell’s career is done.)」と投稿した。クック理事の疑惑が表面化する前だが、すでに告発することをトランプ氏に伝えていたのであろう。トランプ氏の執拗で巧妙なFRB攻撃の材料を提供し、忠誠心を示した形だ。
パルト局長の「活躍」で住宅ローンの不正摘発はトランプ氏が政敵を追放する道具になっている。トランプ氏を批判してきたニューヨーク州の司法長官やカリフォルニア州選出の民主党上院議員も同様の告発を受けている。
もっとも、ロイター通信は9月12日、クック理事のジョージア州の物件の融資申込書には「別荘」と申告されていたと報道、これが事実なら最高裁でも解任を正当化するのは難しいとみられる。さらに、ロイター通信はパルト局長の親族が2つの州の住宅をそれぞれprimary residenceと申告していたと報道しており、泥仕合の様相を呈している。
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