古来、金は世界的に価値が高い実物資産とみなされている。他方で、実際の決済には、銅など金ではない金属、あるいは穀物など金属以外の貨幣で決済が行われてきた。江戸時代における大判や小判は、あくまで価値保存の手段だった。他方で、日々の決済に用いられたのは銭貨だったし、商人による大口の決済は為替手形で行われていた。
金など貴金属が決済に不向きな決定的な理由
なぜ金や銀といった貴金属は決済に不向きなのか。それは、端的に言えば、重たいためだ。重量があるがゆえに、現物の移送(現送)には、多くの困難を伴う。強盗に遭うかもしれないし、事故に遭うかもしれない。そのため、現送の回数を減らす必要があり、年に一回など間隔を置いて、収支尻の額に相当する地金や金貨を現送することになる。
戦前の金本位制度の下でも、各国は貿易決済を行う際、最終的には金を現送する必要に迫られた。そのコストを軽減するための取り組みの1つが、ロンドン(イングランド銀行)やニューヨーク(ニューヨーク連邦準備銀行)という国際金融都市に金を預託しておくことだった。国際金融都市で決済を行えば、相手国に現送をする必要は必ずしもなくなる。
戦後、アメリカと鋭く対立したソビエト連邦でさえ、ロンドンに金を保管していた。1970年代の凶作の際に、大穀物強盗と揶揄されるほどの食料の買い付けをソ連は商品市場で行ったが、その時の決済に使われたのがロンドンに保管していた金だったのは有名な話だ。ただし、これはあくまで大口の決済だからこそできた話であることでもある。
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