「企業価値をまったく生み出せていない」。10年ほど前、IRを担当していたTDKの山西哲司・現CFO(最高財務責任者)は、投資家に厳しい言葉を投げかけられた。当時は買収した小型2次電池の事業が屋台骨へと成長し、売上高は2015年3月期に1兆円の大台を突破。営業利益率も改善傾向にあった。
問題視されたのは、キャッシュフローだ。2次電池の主力はスマートフォン向けで、顧客の新モデル発表に合わせて毎年、求められる性能が高まる。量産ラインの造り込みも必須。そのため、稼いだ利益の大部分を先行投資につぎ込んでいた。業績好調でも手元に現金は残らず、株主への配当の原資を借り入れで賄うほどだった。
