台湾の問題は米中の問題であり台湾は解決できない問題だ、台湾の民主主義もまだ成熟しておらず、与野党が学習中の段階

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現在の台湾の与党・民主進歩党の元老といえる許信良さん(写真・早田健文)
1980年代後半から1990年代の前半、台湾の民主化を進めた中国国民党(国民党)の李登輝時代、在野トップの立場で民主化を推進したのが許信良さんだ。1990年代に2回にわたって民主進歩党(民進党)主席を務めた。今では与党となった民進党で最長老級の最も権威ある政治家だ。
台湾の主体性を追求する民進党の中にあって、中国との交流を主張し、実践してきた異色の人物でもある。その許さんは、世界的に危機感が持たれる台湾と中国の関係について「すべてを決めるのは米中関係であり、台湾に決定権はない」と断言する。そして、「もし米中関係が好転すれば、民進党の対中政策も必ず変わる」という。
1941年生まれの84歳。高齢で表舞台に出ることは少なくなったものの、現在も活発に活動を続けている許信良さんの話から、民進党の本音の一部を垣間見ることができるだろう。

「経験がないので混乱の解決方法がわからない」

――台湾の政治は、このところかなり混乱しているように見える。

私たちの世代は、台湾の民主主義のために奮闘してきた。しかし、台湾が独裁専制体制から民主体制に転換して、それほど長くない。台湾の民主主義はまだ成熟しておらず、与野党がいずれも学習している段階だ。問題はここにある。民主社会の中には多くの対立があるものだが、経験がないのでこれをどう解決すればよいのかわからないのだ。

――台湾の民主主義が成熟していないとは、具体的にどのようなことか。

私は台湾の民主制度を推し進めた人間の1人だ。1990年代、私たちが当時の李登輝総統と協力して憲法改正を進めるに当たって、アメリカのような大統領制でも、日本やイギリスのような内閣制でもなく、フランス第五共和制の二重首長制を模倣すべきだと考えた。しかし、完全にフランスの制度に倣って改正されたわけではなかった。

例えば、少数与党となったとき、大統領にはいくつかの選択肢がある。第1に、国会で多数となった野党から首相を出す方法だ。フランスでは大統領と首相が別々の党派ということがしばしば起きる。しかし、台湾にはそのような前例がないし、与党にそのつもりもない。
(注:台湾では、2024年の選挙で民進党の頼清徳氏が総統に当選したが、議会では過半数割れとなった、議会の主導権は、国民党と民衆党の野党連合に握られている)

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