台湾の問題は米中の問題であり台湾は解決できない問題だ、台湾の民主主義もまだ成熟しておらず、与野党が学習中の段階

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第2に、国会で多数を取り戻す方法がある。フランス大統領であれば国会の解散権がある。しかし、台湾の憲法は総統にその権限を与えていない。国会を解散できるのは、内閣不信任の時だけだ。しかし、野党が内閣不信任案を提出しなければ、解散はできない。
(注:台湾の場合、内閣不信任とは首相に当たる「行政院長」を、議会が解任決議することを指す。行政院長は総統が指名する)

「両岸関係」はアメリカと中国との関係が決定

――そこで、「大罷免」をやるしかないということか。

そう言える。「大罷免」というのも、仕方なしに考え出されたものだ。結果がどう出るのか、それは有権者が決めることだ。罷免が通過しなければ民進党は悲惨なことになり、変わらざるをえない。罷免が通過すれば、国民党は反省しなければならない。「大罷免」も、民意を問う民主主義の方法の一種だ。
(注:現在、少数与党の民進党は、最大野党の国民党の多数の議員をリコールし、議会での多数を取り戻すことを目指している。これは「大罷免」と呼ばれている)

――台湾にそのような時間はあるのか。台湾に影響を及ぼす中国の存在がある。

きょ・しんりょう Hsu Hsin-liang/1941年、日本植民地時代の、現在の台湾桃園市で生れる。台湾・国立政治大学卒業。エジンバラ大学留学。1959年、国民党に入党。1973年台湾省議会議員。1977年、桃園県長(知事)選挙に自主出馬して当選。1979年に反体制デモ「中壢事件」に関与して県長停職処分を受け、国民党除名。反政府雑誌「美麗島」雑誌社長。美麗島事件の発生で帰国を拒否され、アメリカで「台湾建国聯合陣線」を結成し、反体制活動に従事。89年に中国から漁船での密航で帰国。90年5月に李登輝総統による特赦で釈放。1992~1993年、1996~98年、民進党主席。2000年の総統選挙に民進党を離党して出馬するが落選。2000~2002年、総統府資政。2008年、民進党に復党。2016年から、国家安全局の外郭団体であるシンクタンクの亜太和平研究基金会董事長(会長)。台湾の「本省人」(戦前からの台湾住民とその子孫)の中でも少数の客家人。

台湾と中国の「両岸関係」は、基本的にアメリカと中国の関係が決定する。米中が対抗すれば、両岸は必ず対抗する。とくに民進党政権は必ずアメリカ側に立つ。

中国は、「台湾は中国の領土だ、核心利益だ、他人の干渉を許さない」と言っている。これは中華人民共和国の建国以来、一貫した立場だ。しかしこの中国の立場を、大部分の台湾の民意は受け入れない。大部分の台湾の民意は現状維持、つまり独立国家の地位を維持することを求める。民進党だけでなく、国民党の支持者もそうだ。

そこで、米中関係が良好だった時代がどうだったのかを考えてみよう。冷戦時代、米中の戦略的パートナーシップ関係が構築され、ソ連に対抗した。冷戦終結後も、アメリカは中国をWTO(世界貿易機関)に加盟させ多額の資金を中国に投資をした。2000年以降も米中関係は非常に良好だった。そうすると、中国としては台湾問題の解決を先送りすることができる。

――国民党の馬英九時代(在任2008~2016年)、両岸関係は緩和した。

それは、米中関係が良好だったからだ。米中関係が良好なら、台湾が中国と対抗することは不可能だ。現在のように米中関係が悪化すると、両岸関係がよくなることはない。だから現在の状況で、台湾で国民党が政権を獲得することはないのだ。

――仮定の話だが、米中関係がよくなった場合、民進党の政策は変わるということか。

必ず変わる。変わらなければならない。アメリカの支持なしに、民進党が単独で中国と対抗することは不可能だ。

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