フジ・メディアHD、株主総会で“圧勝”でも旧村上ファンド系に不穏な動き。待ち受ける臨時株主総会招致請求の恐怖

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70代の男性株主は、「会社提案はプロパー(生え抜き)の取締役が多いものの、取締役会の人数は減ったし、年齢が若返って女性も増えた点が評価できる。多くの株主がそう考えたのではないか。新経営陣に期待している」と語った。一方、株主提案に賛成票を投じたという50代の男性株主は、「株主提案の候補が1人でも入ってくれれば、フジテレビは大きく変わるのではないかと期待したのだが……」と残念がった。

総会後、FMHの社長就任が決まった清水賢治氏は、「速報ベースながら会社提案の全候補が8割を超える賛成率で信認いただいた。今日の株主総会によって経営陣は完全に刷新され、われわれが示した改革アクションプランを確実に実行する体制ができたと考えている。スピードを上げてプランの目標を達成し、株主やスポンサー企業などすべてのステークホルダーの信頼を回復していきたい」と述べた。

臨時株主総会の可能性大

株主総会で会社提案が信認を得たことにより、ひとまず大きな山を乗り越えた形のFMH。だが、これで安心できるわけではなさそう。というのもFMHの筆頭株主に躍り出た村上世彰氏の長女・野村絢氏をはじめとする旧村上系の投資ファンドが、臨時株主総会招集の請求を目指しているからだ。

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4月半ば以降、旧村上系の投資ファンドは投資先企業の株式を相次いで売却している。例えばインフロニア・ホールディングスによる買収が発表された三井住友建設や、愛知製鋼の株式を売却。クレハが実施した自己株式取得でも、保有株を売却したとみられている。

ある市場関係者は、「村上氏は周囲に『FMHに専念したい』と言っている。これまで旧村上系の投資ファンドはFMHに700億~800億円投資しているが、さらに1000億円を投じたいとしている。そのため投資先の保有株を売却し、資金を準備しているようだ」と明かす。

そのうえで、「株主総会の結果、会社提案と株主提案との票差に当たる株式を購入して臨時株主総会の招集を請求し、自らの意をくんだ社外取締役を送り込もうとしている」というのだ。

臨時株主総会はダルトンも検討しているもよう。今回の株主総会の基準日以降、ダルトンをはじめ旧村上系の投資ファンドも株を買い増しており、株主構成が大きく変わっている。そのため臨時株主総会を開催すれば、今回否決されたような要求が通るとみているからだ。

彼らはなぜ臨時株主総会の開催を目指すのか。その理由について前出の関係者は、「MBO(経営陣による買収)を実施して非公開化させることが狙いなのではないか」とみている。

「アクティビストは出口戦略も鑑みて、数%程度の保有割合でとどめるのが普通。だが今回、旧村上系投資ファンドやダルトンは、市場で売却すると株価が急落しかねない水準まで買い増している。MBOの実施によって株を買い取ってもらい、リターンを得ようとしているのではないか」というのだ。

とはいえFMHは認定放送持ち株会社であるため、MBOは容易ではない。昨年5月にダルトンがFMHにMBOの実施を求めて書簡を送った際にもFMHは拒否しており、その実現性は不透明だ。しかし彼らが臨時株主総会招集を求めることは間違いなさそうであり、FMHとアクティビストとの闘いはもうしばらく続きそうだ。

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田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。『セブン&アイ 解体へのカウントダウン』が小社より24年12月発売。

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唐澤 萌里 東洋経済 記者

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からさわ もえり / Moeri Karasawa

日用品業界を担当。群馬県吾妻郡出身。早稲田大学国際教養学部を卒業後、東洋経済新報社に入社。大学在学中はリトアニアとベトナムに1年ずつ滞在。だし巻き玉子とけんちん汁が好物。

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徳田 菜月 東洋経済 記者

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Natsuki Tokuda

電子部品業界を担当。東京大学文学部卒業、2025年東洋経済新報社入社。中学2年生まで4年間をアメリカ・デトロイトで過ごし、大学時代は硬式野球部のマネージャーとして駆け回る。緑が好きで、ガジュマルを育てようか検討中。

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