日本製鉄のUSスチール買収、「大人の解決策」で大逆転。待ち受ける政治リスク、真の勝利とできるのか
もとより日本製鉄の計画とトランプ氏の政策とは、方向がほぼ一致していた。日本製鉄が最新技術を供与し苦境のUSスチールを再生させることができれば、国内製造業の復権を掲げるトランプ氏の政策の支えになる。
それを理解してか、トランプ氏は今年1月の大統領就任後、日本製鉄の計画はアメリカへの「投資だ」と繰り返し発言。今年年初に買収禁止の大統領令を決めたバイデン前政権より、態度を軟化させていた。
呼応するかのように、交渉チームを率いた森高弘副会長兼副社長も「投資」という言葉を頻繁に使うようになった。5月にワシントンDCから東洋経済のオンライン取材に応じた際、森氏は「競争力を上げ品質も良くする。アメリカの自動車メーカーの成長にもつながり、地域の皆さんにも労働者にもプラスになる投資だ」と語っていた。
これらは、森氏がアメリカの議員や政府関係者らの説得で語ってきた内容だ。交渉関係者によるとトランプ氏に近い上下両院の議員らも計画に賛同し、トランプ氏説得に動いていた。それでも互いに譲れない点が最後の最後まで残っていた。

大人の解決策「黄金株」で両社の主張を両立
「鉄鋼王」のカーネギーらが設立したUSスチールは、世界一の粗鋼生産量を誇ったこともある。そんなアメリカの象徴とも言える企業が外資に買われるのはトランプ氏には認めがたかった。「アメリカを再び偉大に」とのスローガンに逆行するように支持者から捉えられかねないからだ。
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