【生ける伝説】フランシス・フォード・コッポラ監督 『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』華々しいキャリアの一方、自己破産もした激動人生

――コッポラ監督は本作制作の意図を、「アメリカは共和制ローマの再来である。そこで古代ローマを模倣した現代のニューヨークを舞台としたローマ叙事詩を描きたかった」と語っています。
わたしは人生の中で多くのローマの叙事詩を見てきた。『スパルタカス』や『ベン・ハー』など、さまざまな作品があったが、自分だったらそれをどういう風に撮るかなと考えた。
そもそもアメリカは王国ではなくて共和制を選んでいる。そのうえでローマの法律を取り入れ、それを土台にして上院議会などが築かれていった。そして古代ローマも結局共和制を失ったわけだが、アメリカを舞台に同じ事を描いてはどうかと思ったわけだ。ただ、今日の政治がこれほどまでに現実味を帯びてくるとは思いもしなかったが。
父は作曲家で裕福な家庭ではなかった
――インタビューで「お金は大事ではない」と話していましたが、コッポラ監督の映画人生にはお金の苦労話がつきものでした。コッポラ監督はお金とどう付き合っているのでしょうか?
私の家庭は中流と言えるかもしれないが、あまり裕福ではなかった。うちの父(作曲家のカーマイン・コッポラ)は非常に優れたクラシックの演奏家だったが、いろいろとキャリアを変えようとしていく中で、お金がない時期もあった。だからわたしがある程度、お金に余裕を感じるようになったのは『ゴッドファーザー』の後のこと。これでやっと家族に楽をさせることができるなと思った。
でも「お金が大事ではない」と言った真意は、やはり制作資金を調達できずに、自分の財産をつぎ込んだことにある。わたし自身はお金持ちになりたい、ということを目標としていない。
今、わたしは86歳だが、これをやっておけばよかったと後悔するのではなく、今も常にこれをやらねばということをやるようにしている。だから『地獄の黙示録』を撮らねばならないと思ったし、『ワン・フロム・ザ・ハート』を撮らねばならないと思った。
“やれなかった”ではなく“やらねば”ということに力点を置いているし、お金はそのためにあるものだと思っている。
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